「尾鷲甘夏」継承へCF 農家の日下さん、選果機導入資金募る

【自身の甘夏畑でCFの協力を呼びかける日下さん=尾鷲市天満浦で】

【尾鷲】三重県尾鷲市天満地区特産の尾鷲甘夏を継承する体制構築のため、甘夏農家を営む日下浩辰さん(53)が、選果機の導入資金を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。目標金額は100万円で募集は3月末まで。

堺市出身の日下さんは令和3年1月、地域おこし協力隊に着任し、耕作放棄地の再生を担う。3年間放置された約1・5ヘクタールの甘夏畑を整備し、360本の木から約20トン収穫。周辺の食料品店などに出荷している。

同地区の甘夏栽培は70年前、日当たりの良い傾斜地を生かした園地で始まった。平成元年に同地区の甘夏農家は26人いたが、昨年末時点で4人まで激減。耕作放棄地の増加や後継者の育成が課題となっている。

さらに昨春、甘夏農家らでつくる市開拓農業協同組合が解散。組合の選果機での共同選果が困難になった。同地区では有機栽培を実践。農薬が付着するため、慣行農法で栽培する他地域の農家を頼ることはできない。

日下さんは「解散は想定外」と振り返る。初めて出荷作業を経験し、放棄地再生の兆しが見えた時期。出荷は「選果機がないと一気に重労働と化す」と不安視し、作業の効率化を図ろうと、選果機の導入を決断した。

CFを始めるのに先立ち、設置に必要な倉庫を借りたという。遅くとも4月初旬までに選果機を購入する方針。導入後は自身の選果作業で稼働させるほか、新規就農者を支援する「選果基地」として安価で貸し出す。

耕作放棄地の解消に向け、次世代の担い手を求める中で「まずは良い環境を用意して出迎えることが大事」と指摘。CFは「種まき作業」とした上で「退任後も尾鷲で甘夏栽培を続け、歴史を残したい」と意気込む。

CFサイト「CAMPFIRE」で購入資金を寄付できる。3千円以上でメッセージや活動報告書を送る「純粋応援プラン」や、5千円以上で甘夏を届ける「尾鷲甘夏プラン」など。4月中旬から返礼品を発送する。

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