<まる見えリポート>知事ら給料引き上げ 県民理解得られるか

【定例記者会見で、自らの給料に言及する一見知事=県庁で】

外部有識者などでつくる三重県の特別職報酬等審議会(10人)が先月、知事ら特別職の給料と議員報酬を引き上げるよう、一見勝之知事に答申した。近年の物価高や公務員の賃上げが主な理由で、引き上げが決まれば29年ぶり。一見知事らの発言を踏まえると、引き上げは確実な情勢とみられる。一方、これまでに県民感情を意識した議論や発言は見当たらず。県職員からは「既に100万円以上ある月給を引き上げる必要があるのか」との指摘も。引き上げには相応の説明が求められそうだ。

報酬審は先月24日付の答申で、知事の月給を2万円、副知事は1万5千円、それぞれ引き上げることが適当と結論づけた。議員報酬は月額で1万3千円、議長は1万6千円、副議長は1万4千円の引き上げが適当とした。

この答申を適用した場合、知事の月給は128万円から130万円にアップする。副知事は102万5千円、議長は103万6千円、副議長は91万4千円、議員は84万3千円にそれぞれ上昇。答申は4月の改定が適当としている。

引き上げの答申は「近年の著しい物価高」が主な理由。直近で知事らの給料が改定された平成19年以降、消費者物価指数は約10ポイント上昇したとされる。その間で、部長級職員の給与が1・57%増となったことも考慮したという。

報酬審の設置は10年ぶり。10年前に設置された前回の報酬審は、据え置きを答申していた。今回も給料や報酬を変更する場合は「あらかじめ審議会の意見を聞く」と定めた県条例に基づく設置だが、背景には一見知事の意向があったとされる。

その一見知事。今月9日の定例記者会見で、自らの給料を「経営者や大臣より全然安い。事務次官よりも安い」と説明。「政治的なパフォーマンスで安くするのは否定しないが、責任を伴う仕事であれば、それなりの給料になる」とも語った。

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 一方、県が報酬審に提示した資料の選び方に違和感がある。特筆すべきは人事院の「民間企業における役員報酬調査」。社長の報酬年額は4225万円―8602万円、会長は5636万円―9305万円に上るという。

ただ、この調査が対象としているのは、規模が少なくとも500人以上の企業。これほど報酬がある県内の経営者はどれだけいるのだろうか。「県内の役員報酬に関するデータを探したが、見つからなかった」(県人事課)という。

引き上げの答申を受けた職員らの反応はさまざま。「仕事量や職責を踏まえると、知事の給料は低い」と、ある幹部は引き上げに賛同した。一方で「既に月額で128万円もあって、さらに上げる必要があるのか」と指摘する職員もあった。

答申の報道を受け、ネット上では「上げすぎ」「もらいすぎ」などと、引き上げに反対の書き込みが目立つ。「反対派が多くてびっくり」とのコメントも。反対する人が多く書き込んでいる可能性を考慮しても、決して無視できる意見ではない。

県によると、期末手当や退職手当を含め、知事が任期中に得る総収入は約1億2100万円。全国の知事では24位という。引き上げの最終判断は知事自らに委ねられるが、給料や報酬の財源は全て税金。県民の理解を得られるかが問われる。