▼「脱皮できないヘビは死ぬんでしょ?」というのは北川正恭元知事が就任当時よく口にした言葉だ。改革派を自任し、政治に改革が不可欠という例えとして用いた
▼ヘビの脱皮は人間がアカを落とすのと同じで清潔を保つのが第一で、成長のためでもあるらしい。政治に不可欠ということは実感する。古来、ヘビは悪魔の使いとされる一方、再生や神秘、知恵を象徴する動物として崇められていた
▼禁断の木の実を食べるようアダムとイブをそそのかしたのがヘビという旧約聖書『創世記』の挿話がある一方、古代エジプト王の王冠にはヘビが飾られており、また、医術の神のアスクレピオスの杖に巻き付いて、今日も医学のシンボルとされている。日本医師会のロゴはヘビとともに医薬に関係の深い乳鉢と乳棒を図案化している
▼巳年(ヘビ年)の幕が明けた。荒ぶる竜から、使い方一つで毒にも薬にもなるヘビへ交代したとすれば、知恵の出し方が問われる年とも言えよう。再生と復活への願いは昨年一年であふれんばかりだ。それだけに、さらに悪化へいざなう勢いはみなぎっているが、どちらに変容するか、どちらに伸長し、加速するか。人間の未来が試される
▼脱皮し再生する年のスタートである。もう一度夢に挑む年でもあろう。そのためには、柔軟な思考や、変化に適応する力を磨き、新たな世界への困難な壁を乗り越える努力と洞察力が求められよう。初詣で、一年の計に思いを巡らすのに最適な年であるかもしれない
▼三日坊主を何度繰り返すのもいいではないか。