
【志摩】三重県の志摩市は、情報収集を行う消防隊員の安全確保や災害現場の状況把握を効率的に行うため、ドローン(無人航空機)やAI(人工知能)、眼鏡型の情報端末「スマートグラス」を組み合わせた最先端の救助支援システム「3rd―EYE(サードアイ)」を市消防本部に導入し、10日に実装訓練をした。
消防隊員20人らが参加。訓練は、同市大王町の次郎六郎海水浴場でシーカヤックに乗っていた人が海に落ち、行方不明になったと想定。隊員らはドローンで上空からの捜索を開始し、スマートグラスを装着した隊員は陸上と救助艇に分かれて捜索した。
ドローンのライブ映像はAIが自動解析し、行方不明者と思われる海上の物体を判別。指揮隊のタブレット端末や現場の隊員のスマートグラスに情報が共有され、行方不明者の位置を特定すると、隊員らが救助に向かった。スマートグラスの映像も指揮隊に共有され、現場と連携しながら救助にあたった。
志摩市は、市と「自治体のDX推進に関する連携協定」を結ぶソフトバンク(東京都)、サードアイの開発を手がける「ロックガレッジ」(茨城県)と連携して導入。事業費は1099万円で、2分の1は「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用する。自治体による導入は全国初という。
市消防本部によると、水難事故の救助活動では潜水による捜索と並行し、浅瀬や消波ブロックなどを陸上から目視で捜索するため、多くの隊員と時間を要することが課題となっていた。
サードアイを導入することで早期に広範囲の捜索が可能となり、従来に比べて大幅な時間短縮につながるほか、AIの人体検知機能を活用し、見逃しの危険性を最小限に抑えられることから、より効率的な捜索活動ができると期待されている。
橋爪政吉市長は「今回は実証実験をすることなく実装するという一足飛びのスタートになったが、志摩市の自然環境がサードアイの機能を最大限に発揮できると思い、導入した。市民や観光客の安全安心をしっかりと守っていきたい」、指揮隊長を務めた西川正文消防司令は「実装訓練を行い、早期発見、早期救出につながると実感した」と話した。