▼これぞ一見県政、と言っては失礼だが、スピード感がこれほど失われるとは思わなかった。客による嫌がらせなどの「カスタマーハラスメント」である。2月の定例記者会見で一見勝之知事が構想を明らかにした時は、先行していた東京都とどちらが先かと思わせた
▼6月の県議会で関係部局幹部でつくる推進本部設置を表明。7月には有識者らの検討懇話会を立ち上げる。中身も急拡大し、2月には「場合によっては考えなければならない」としていた条例化は6月には既定の方針となり、行政の窓口に訪れる県民も対象となり、罰則も検討課題に加わった
▼がくんとスピードが落ちるはず。東京都が10月4日、全国初の条例を可決させたのに、県はまだ輪郭さえ判然としない。罰則など慎重に進めなければならない一方で、急がなければならない対策もあると議会が尋ねたのに対し、松下功一雇用経済部長はカスハラは許されないという考えを社会に浸透させるなど「できることから取り組む」
▼小さく産んで大きく育てるが、男女雇用機会均等法を世に出し「均等法の母」と呼ばれた赤松良子・労働省婦人局長である。自身、強い男女均等論者で、法制定の動きに女性労働団体は大きな期待を持って制定に臨んだが、赤松さんは議論が紛糾して白紙に戻ることを何より恐れ、懸案事項は次の改定に持ち越した
▼「実効性を高めるために罰則規定も検討」と「できることから取り組む」は相いれぬ考え方ではないか。まず形を見せ、県民の反応を見ながらゆるゆると進めるのも一策だ。