▼一見勝之三重県知事がリニア中央新幹線品川―名古屋間の令和９年開業予定をＪＲ東海が断念したことに「非常に残念」と語った記者会見と、静岡県の川勝平太知事が新採用職員の入庁式での失言を受けて辞職表明したのは同じ時間帯だったらしい。リニアの予定が風雲急を告げてきた
▼数々の失言で知られる川勝知事だが、全貌はともかく、リニア停車駅を巡る鈴木英敬前知事（現衆院議員）との５年前のバトルは記憶している向きも多いのではないか。宮廷行事で顔を合わせた鈴木前知事が亀山市にほぼ決まったと言った言わないで口論となり、川勝知事が「うそつきは泥棒のはじまり」と言い放った
▼他県の知事を泥棒呼ばわりしたのである。今回は、新職員を前に、野菜売りや牛の世話をするのと違い「皆さまは頭脳、知性の高い人たち」と発言した。１次産業従事者は知能が低いのかなどの抗議殺到に、川勝知事はそういう意図ではないとして、謝罪はしたが、撤回はしなかった。失言には、少なからず上から目線や、差別意識がにおう
▼北川正恭元知事が就任間もないころ、道路開発に力を入れるとして「山をくりぬいたりするのは本当に心が痛むのですが、県内市町村長の要望は圧倒的に道路整備」と語ったことに半ば共感した
▼川勝知事は、大井川の水量減を懸念して着工を拒否。「国益」を錦の御旗に地元無視で強引に進める公共工事を見てきた目には、国やＪＲ東海が同知事をどう納得させるかに関心があった
▼退場は残念だが、失言が生まれる意識を思うと当然な気もする。