2023年7月7日(金)

▼津市で4歳の女児が虐待死した事件について前葉泰幸市長が「あくまでも権限と責任は県にある」とした上で「中勢児童相談所に対し、市としてもっとアプローチできたことがあったのではないか」

▼また、こうも言う。「県と市はイーブンの関係ではない」が、最優先の子どもの命を守るために「市としてもっと強いアプローチができなかったのか、もっと踏み込まないといけなかったのではないかというのが率直な気持ちだ」

▼その通り、とうなずく人は多いに違いない。が、落とし穴はすぐその足元にある。11年前の四日市市での生後10カ月の女児が母親に殴られて死亡した事件で、県の検証委員会が今後の再発防止のために指摘したのが危険度の適切な査定と、関係機関の連携

▼児相の権限は今ほど強くなかったが、市は児相の経過観察案件と見なして積極的介入を避け、児相も市の担当部門に相談することはなかった。検証委は「(市は)県の機関を上位機関であると受け止めることをやめ、むしろ最も具体的な情報が集まる強みを自覚することが求められる」

▼市の児童関連部局が児童虐待防止という課題で情報交換し、対応できるシステムの構築が必要で、県はその体制づくりを調整すべきだとしている。津市がそうしてこなかったのは、前葉市長の発言でよく分かる。県も事件後、関係機関の情報共有の場づくりを進めたが、力点は警察をいかに巻き込むかに注がれ、市町との連携に見るべき点はなかった

▼県の深刻な虐待事件は、いつも背景に幼保を含め教育機関と市町、県の境界線上の連携不足がある。