<検証・県予算>森林税 一律1000円、逆進性高く 認知度低く活用も不十分

【「みえ森と緑の県民税」のポスター=県庁で】

全ての三重県民が年間で一人当たり千円の税金を取られていることをご存じだろうか。「みえ森と緑の県民税」(森林税)。生活保護を受けている人などを除き、県が県民税に上乗せして市町を通じて徴収している。

県は「災害に強い森林づくり」などを目的に、平成26年度から森林税の徴収を開始。流木や土砂の撤去、森林の大切さを伝える啓発などに充てている。令和5年度当初予算案にも10億9200万円を計上した。

森林税には突っ込みどころが多い。まずは税の性質。同じ金額を徴収するという点で「公平」とも捉えられかねないが、所得に応じて税率が上がる累進制とは相反する。消費税以上に逆進性が高い。

いわば「人頭税」に近いものがある。人頭税はイギリスのマーガレット・サッチャー元首相が導入し、国民の反発を受けて廃止したことで知られる。逆進性の高さから、現在ではほとんどの国で採用されていない。

なぜ一律に徴収するのか。森林税に関する報告書は「森林の恩恵は全ての県民が受けている」と説明するが、それなら森林に限ったことではないはず。担当者は「過去の経緯なので、よく分からない」と話す。

そもそも県民の多くが森林税の存在すら知らない。県が昨夏、無作為に抽出した県民を対象に実施した森林税に関する調査では、回答した2278人のうち「知らない」と答えた人が80・5%に上った。

話題はそれだけではない。国は令和6年度から「森林環境税」の徴収を始める。同じく国民から一律に千円を徴収する予定だが、県の森林税も継続する見通し。つまり、森林関係で2千円の税が課されることになる。

他方で森林環境税が十分に活用されていない課題も。国は徴収に先行して森林環境譲与税を自治体に交付しているが、県内の市町は令和3年度に譲与された約8億1千万円のうち、3億8千万円を活用しなかった。

森林税への疑問を解消すべく県庁内で聞き回ると、ある職員は「千円だから良いでしょう」。別の職員は一律に徴収する理由を「みんな空気を吸ってますから」。徴収する側の姿勢に開いた口がふさがらなかった。