<検証・県予算>スタートアップ 補助金効果を懸念「数字より機運」

【「スタートアップ支援」の説明資料】

令和5年度当初予算案にずらりと並ぶ横文字の事業名。GX(グリーントランスフォーメーション)に続いて、またも興味深いものを見つけてしまった。「スタートアップ」。近ごろ耳にする言葉ではある。

県は新年度から、スタートアップの支援を強化する。スタートアップとは「新たな技術や発想で新たなサービスを提供する新興企業」(担当者)を指す。地域の課題解決につながる起業や事業拡大を促したい考えだ。

新年度はスタートアップを多方面から支援するため、金融機関や大学、ベンチャーキャピタルなどでつくるカンファレンス(協議会)を設置。ビジネスパートナーとなる中小企業とのマッチング(関係構築)も進める。

中でも目を引くのは新設する補助制度。1事業所当たり200万円を上限に、立ち上げから約1年間で必要な経費の半額を補助する。補助の対象は最大3者で、外部有識者が実現性などを加味して対象を選定するという。

ところが、この補助制度が予算化されるまでには紆余(うよ)曲折を経ていたことが、取材を進めるうちに分かってきた。事業を精査する段階で、デジタル社会推進局の要求に対して財政当局から「物言い」が入っていた。

財政当局が懸念したのは補助金の効果。スタートアップという性質上、補助金を出した事業者が成長する確実性は高いとは言えない。「資金面の支援なら既存の利子補給制度がある」とも指摘していたという。

県は過去にも創業支援の補助制度を設けていたが、財政難に直面する中で廃止した経緯もある。財政当局の「物言い」には「財政に余裕が生まれても、やみくもに事業を復活させてはならない」との意思が垣間見える。

ただ、結果的には予算案に盛り込んだ。背景に一見勝之知事の強い意向があったとされる。昨年12月の一般質問で「他県もスタートアップの支援策を整えつつある。三重も遅れるわけにはいかない」と答弁していた。

そして数値目標。どれだけのスタートアップを生み出したいのかと尋ねたが、担当者は「まずは数字を追うより機運を高めたい」。看板の付け替えだけで結局は同じことをしているだけ、とならぬよう願うばかりだ。