安倍元首相の銃撃、三重でも衝撃 1週間前に来県し演説

【記者会見中に安倍元首相の死去を知り、涙を流す田村会長(左)と鈴木衆院議員=津市桜橋2丁目で】

安倍晋三元首相が8日に奈良市内で凶弾に倒れて死亡した事件は三重県内にも衝撃と悲しみをもたらした。安倍氏は1週間前に来県したばかり。与野党問わず、県内政界から「言論を凶弾で封殺するのは民主主義への冒とくだ」などと非難の声が相次いだ。

自民党県連の幹部らは安倍氏の死去が報じられた同日午後6時前、津市で緊急会見を開いていた。田村憲久会長は「凶弾による言論の封殺を断固として非難する。ひるんではならない」と述べていた。

そのさなかに県連職員が安倍氏死去の情報を伝えると、会場は沈黙に包まれた。田村会長は会見を打ち切り、同席した鈴木英敬衆院議員や谷川孝栄県議らはハンカチで目頭を押さえ、肩を支え合って会場を後にした。

【演説する安倍元首相=1日、伊勢市朝熊町で】

県によると、安倍氏は首相在任時、伊勢神宮参拝や主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)への出席など、13回にわたって公務で来県した。平成25年の伊勢神宮式年遷宮に伴う「遷御の儀」にも参列した。

直近の来県は今月1日。県営サンアリーナ(伊勢市朝熊町)で開かれた参院選三重選挙区(改選数1)の自民候補の演説会に出席した。約2200人(主催者発表)を前に自民候補への支援を呼びかけた。

安倍政権で官邸スタッフを務め、知事時代には伊勢志摩サミットを誘致した鈴木氏は8日夕、報道陣の取材に「まだ信じられない」と語った。「悔しい気持ちでいっぱい」との言葉を繰り返した。

鈴木氏は1日に来県した安倍氏から「よく(多くの参加者を)集めたね。大したもんだ」との声を掛けられたという。「日本にも世界にも必要な人だった。志半ばだったと思う」と惜しんだ。

野党も銃撃を強く非難した。「日本の国はこんなことではなかった。民主主義の社会を創りあげてきたはずなのに」。立憲民主党県連の中川正春代表は、言葉を詰まらせながら本紙の取材に応じた。

安倍氏が首相を退任した際には、他党でありながらもねぎらいの声をかけたという中川氏。「とにかく今は憤りしかない。ご冥福をお祈りする。動機や背景の解明を急いでもらいたい」と語った。

共産党県委員会の大嶽隆司委員長も取材に「安倍さんとは政治的主張が対極の立場だが、我々が戦わせてきたのは言論。暴力によって民主主義を否定することは絶対に許されない」と非難した。