2022年6月3日(金)

▼日本の女性の働き方を示す代表的指標に「M字カーブ」がある。20歳代まで就職者が上昇し、30歳代の出産・育児期で離職者が増え下降線をたどる。子育てが一段落した40歳代で再び上昇する。最初の上昇カーブと再上昇カーブの中身にキャリア的関連がないのも特徴だ

▼「理解が職場に浸透していないことが背景にあると考えられる」(県子育て支援課)というのは、M字カーブの解説ではない。不妊治療の実態把握で、離職したり仕事との両立に悩む人の割合が増加していることの説明だ。これしきのことを調査し、誰もが分かりきっていることをひとくさり述べるのが主要なお役所仕事というものなのだろう

▼回答で「どこに相談すれば良いか分からない」が大幅減。調査の成果のような扱いだが、不妊治療の助成申請者が対象だから当たり前の気がする。「依然として希望通りに働けない人が多く、職場の理解促進に努める」として企業向けにセミナーなどを始めるというのは、何か始めてみる程度のことなのだろう

▼これに対し、両立に悩み、断念した回答者の「職場に迷惑をかける」、上司から「遠回しに退職を勧められた」などの話はよく分かる。結婚や有休取得などで散々体験してきた。その中で多く占める〝気兼ね〟は、企業に不妊治療の知識や理解を啓発してどうなるものでもあるまい

▼調査の意義をあえて言えば、女性が働く中で直面してきた問題がここでも浮き彫りになったということだ。分かっていることを毎回小出しにする。女性が出産する環境としては、県は可もなし、多少不可あり―。