2022年5月4日(水)

▼応接にいとまない国民の祝日の中で憲法記念日は戦後75年、厳として三日に揺るがず、安心して一日を過ごせるが、時代はそうはいかなくなりつつある。共同通信社の世論調査は戦争放棄をうたう九条改正について必要が50%で、必要ないの48%を上回った

▼ロシアのウクライナ侵攻の衝撃が作用していようが、もう一つの衝撃、新型コロナウイルス感染に関連して国会議員任期を延長できるようにする改憲は賛成76%、反対23%。改憲に抵抗のない人が増えていることは否めない

▼共同調査は改憲機運については「高まっていない」が70%と、一面矛盾した結果も。必要性に反論できなくても、実施にはためらいがあるということか。改憲派が主張する押しつけ憲法論にも一理あることを認めざるを得ないこともあるのだろう

▼戦中から戦後にかけて学生時代を過ごした人は、昨日まで忠君愛国を力説していた教師が一夜で民主主義を説いたと、国家への不信感を高めたとされる

▼前独首相アンゲラ・メルケルが自由、民主主義は向こうからやってきたのではなく「私たちが勝ち取ったのです」と言った思いは戦後の日本国民の誰もが実感しなかったことに違いない。首相経験者が「核共有論」を唐突に打ち上げるのも、与えられた民主主義を享受してきたからか。戦争放棄に思い入れはなく、その意味で考え方にプーチン露大統領と似たところがあるのかもしれない

▼憲法、防衛論議を国民全体で考える時と言えよう。声高に勇ましいことを言う指導者らに引きずられた経験は誰にもあろう。それだけは忘れたくない。