2022年4月13日(水)

▼今は一般名称になって正式名は別にあるのが普通だが、その当初は「有識者会議」が固有名詞で、参加するメンバーの心境は、自らを有識者と任じているか、それとも面はゆい気持ちかと想像を巡らしたことがある。知事と市町長が対談する「知事と市長の円卓対話」がスタートした。こちらは、命名者も参加者らしい

▼形式、内容とも、これまでの知事と首長との一対一対談との相違は見られない。参加者は複数でもないようだから、「円卓対話」は中世ヨーロッパの英雄アーサー王伝説に基づくエリート騎士団が、上下の差別をつけないため円卓で会議をした「円卓会議」を意識した命名に違いない。自身をアーサー王、あるいはエリート騎士になぞらえたのかどうか

▼史実とは別に、アーサー王物語は多くの文芸作品になっているから「円卓会議」もさまざまな形が伝わるが、円卓の椅子は魔術師によって呪いがかけられ、参加に値しない騎士ははじかれてしまうという。限られた雲上人ら会議といえようか

▼県の「円卓対話」は、若い女性の転出を懸念して背景の問題点を示唆する一見勝之知事に対して、亀井利克名張市長が「知事が良ければそうではなくなる」と返して会場を沸かせたという。互いに業績や期待値をたたえ合う当たり障りのない内容で、だからどうだとか、どうするなども示されないありきたりのようなのは、喜ぶべきか、悲しむべきか

▼名前負けしている感はなきにしもあらずだが、我が身の拙さに恥じ入り、伝説の英雄に少しでも近づきたいと願うあまりの命名なら、むろん悪いことではない。