「まる見えリポート」生活保護者に過度な指導か 鈴鹿市で運転記録票の提出求める

【市が独自に提出を求める運転記録票=鈴鹿市内で】

三重県鈴鹿市が生活保護受給者の自動車保有認定に際し、市独自で運転記録票の提出を指示していることが分かった。県内では鈴鹿市のみという。同市保護課の伊藤朋之グループリーダーは「運転状況を把握するための客観的な情報として必要な措置。市職員が公用車を運転する時に付けているのと同じと理解してもらえれば」と説明する。

生活保護の申請相談や援助活動に取り組む市民団体「鈴鹿生活と健康を守る会」(下井信夫会長)が、3月17日に市へ提出した公開質問状で明らかになった。下井会長(71)は「法的根拠がなく、市による人権侵害」と憤る。

生活保護制度では原則として自動車の所有は認められていないが「公共交通機関の利用が著しく困難」など、個々の具体的な状況によって認められる場合がある。

市によると、現在自動車の所有を正式に認めるのは1件のみ。

同市石垣2丁目の小林幸子さん(79)と次男の小野伯幸さん(54)親子は、令和元年10月から生活保護を受給する。

小野さんは12歳の時の脳腫瘍の後遺症で、現在は難病指定の下垂体全容機能低下症で身障手帳2級を持ち、親子で市内の就労継続支援B型事業所に通う。

市はケース検討会議に諮り、市社会福祉事務所の所内判断基準に基づき令和3年7月、小野さんの通院利用に限り小野さんの自動車使用を認めるとともに、保有条件として運行記録票の提出を示した。運行記録票には運転経路や用件、運転者と同乗者を記入する。

伊藤グループリーダーは「通院のために使用を許可しており、通院帰りの買い物は認めている。県や市の顧問弁護士にも相談し、人権侵害には当たらないと判断している」と話す。

一方、親子は「行き過ぎた指導。常に行動を監視されているようで辛い」と話し、運行記録表はほとんど提出していない。1月に三重弁護士会人権擁護委員会に人権救済を申し立てた。

両者の意見は平行線をたどる。県地域福祉課保護・援護班の藤原秀雄班長は「各福祉事務所が裁量の範囲で判断している。行き過ぎた指導かどうかは受け手の気持ちが大きい」とした上で、「現行制度は対立するとあいまいさが問題になるが、柔軟な制度設計により、融通が利くことで助けられるケースがあるのも事実。互いの信頼関係が制度の好循環を生み出す」と話す。

下井会長は元ケースワーカー。「本来、保護を受ける側と保護する側の立場は同等。保護する側が保護を受ける側の上に立つ意識が行動を見張り、管理する行為につながる」と市の姿勢に疑問を投げかける。

1日、同市役所の新規採用職員辞令交付式で末松則子市長は「全ての市民に向き合う気持ちを忘れないで。相手の立場に立って考えてほしい」と呼びかけた。

心に寄り添った対応が求められる。