<まるみえリポート>新常態へ事業再構築 コロナ禍3年目、取り組み加速 ラウンジからキッズパークへ

【鳥羽ビューホテル内にオープンしたキッズパーク。ラウンジから生まれ変わった=鳥羽市安楽島町で】

コロナ禍の世の中も3年目を迎えた。三重県内ではまん延防止の「再拡大阻止重点期間」が3日で終了。感染拡大防止の徹底を図りながらも、社会や経済活動の正常化に向けた再始動が必須となっている。一方でマスク着用、ソーシャルディスタンス、リモート対応などコロナ禍で行動様式もさま変わりした。そんな中、打撃を受けた観光地や中小企業などは既存事業の再構築などを実施し、ポストコロナ・ウィズコロナ時代に向けた取り組みを加速させている。

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鳥羽ビューホテル花真珠(鳥羽市安楽島町)は先月20日、敷地内に親子で楽しめる屋内型キッズパーク「umi no ue」をオープンさせた。

【子どもたちが遊べるスペースを設置=同所で】

キッズパークがある場所は海側の鳥羽湾が一望できる高台に位置。晴れた日には鳥羽湾に浮かぶ離島や知多半島まで臨むことができる同ホテル屈指のビュースポットの一つだ。

そこに乳幼児から12歳までが楽しめるボールプールやボルタリングなどの遊具を設置。保護者が子どもを見守りながら、スイーツを楽しめるカフェも併設している。

そんな絶景スペースはもともと、団体客らに酒類を提供するラウンジとして運営されてきた。ところが新型コロナウイルス感染症が発生。感染拡大は続き、利用客は激減していったという。

一方で、安心できる環境でゆっくり過ごしたいという親子連れの宿泊者は増えていった。そこで大人も子どもも楽しめるスペースを作れないかと考え、ラウンジからキッズパークへと大胆に業態チェンジを図ることにした。施設の改修には、2分の1補助が受けられる国の事業再構築補助金を利用した。

女将の迫間優子さんは「コロナ禍の2年間はまるでジェットコースターに乗っているようだった」と振り返る。緊急事態宣言やまん延防止措置などが繰り返され、そのたびに宿泊客は減ったり増えたりを繰り返した。ラウンジについては1年間利用客ゼロだったこともあり、なかなか展望を見いだせなかったとする。

自身も子育て中の迫間さんは「コロナ前の数年前に海外に行った際、ホテル内にキッズパークが併設されているのを見て、いつか親子で楽しめるスペースを作りたいなと考えていた」と話す。ただ、ラウンジも一定の売り上げがあり、なかなか踏み切れなかったという。

コロナ禍で旅行客が減り、観光地やホテルは大打撃を被った。一方で、「立ち止まり、考えるきっかけになった」と迫間さん。「苦しい思いもたくさんしたが、コロナがなければ立ち上げていなかったかも知れない」と話し、「海を一望できる絶景のキッズパークはここにしかないはず。新たなチャレンジができた」と手応えを示す。

ラウンジをなくした一方、お酒が飲みたいとする宿泊客には市内のスナックなどを案内することにした。「観光地はどこも疲弊している。幅広い循環ができれば」としている。

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コロナ禍の状況も3年目に入った。県によると、緊急事態宣言やまん延防止措置などで休業や営業時間の短縮などを行った飲食店やホテルなどへの協力金は、令和2年度は累計1万2428件、総支給額70億2898万円。令和3年度は昨年10月現在で2万6963件、309億1300万円に上る。

一方、感染拡大の収束は見通せず、長期化が予想されている。既存事業では需要回復が見込めない業態もあり、経済社会の変化に対応するため、新分野への展開や事業転換など思い切った事業再構築も必要となっている。

県でも新年度当初予算に生産性向上・業態転換支援補助金などを計上。中小企業や小規模事業者がアフターコロナを見据えて取り組む事業を後押しする構えだ。

ただ、業態転換しようにも事業維持すら困難な体力のない小規模事業者も多いと見られる。中小企業らを支援する団体の関係者は「支援の裾野をもっと広げる必要がある」としている。