童話集でがん患者を応援 伊勢の鈴木さん自費出版 三重

【がん患者へ応援の思いを込め自費出版した「はとこ童話集」を手にする鈴木さん=伊勢市上野町で】

【伊勢】「がん患者さんを応援する童話集。読んで元気になってほしい」―。三重県伊勢市上野町の鈴木はとこ(本名・和子)さん(78)が、約10年間に趣味で書きためた童話の一部を1冊にまとめた「はとこ童話集」を自費出版した。20年前、末期の子宮頸がんと宣告され、長い闘病生活を乗り越えた鈴木さんが「痛みや苦しさで不安になった時、少しでも病気を忘れて楽しんでほしい」と思いを込めた。

鈴木さんは、平成14年に子宮頸(けい)がんと診断され、入院手術、再発、転移と長い療養生活を経験。平成23年には、約7年間の治療の過程や暮らしをつづった闘病記も出版している。

童話を書き始めたのは、10年ほど前。自身の病状が回復するのと入れ替わるかのように、夫・至さんを病気で亡くしたことがきっかけ。

長年支えてくれた至さんがいなくなったさみしさを紛らすように「童話を書いてみよう」と始め、友人たちに読んでもらうことが楽しみになったという。日常の中でふと思いついたことを物語にし、平成27年には、一つの作品が童話公募コンクールで受賞した。

これまでに創作したのは31作品。周囲の勧めもあり、「自分と同じような苦しい治療をしている人に読んでもらいたい」と童話集の制作を思い立ち、12作品を選んで掲載し、挿絵も手掛けた。

カッパと男の子の交流を書いた「つられたカッパ」、キツネの親子が登場する「親子でグウグウ」など、動物が登場する作品が中心。一人暮らしの老人とカラスの触れ合いを描いた作品には「死を目の前にしたとき恐れないで。周りの人は悲しまないで。きっといいこともある」とのメッセージが込められている。

A5判138ページで、500冊を刊行。伊勢志摩地域の市町の図書館や福祉施設などに寄贈する予定。がん患者らに贈ることも検討している。

鈴木さんは「童話は子どもらに向けたものだが、大人が楽しめる作品。コロナ禍で外出もままならない状況が続く中、童心に返って読んでもらえたら」と話していた。