「一年を振り返って」志摩マリンランド営業休止 新型コロナ拡大が追い打ち

【営業最終日を迎え、一列に並んで来館者を見送るスタッフら=3月31日、志摩市の志摩マリンランドで】

志摩市の憩いの場として親しまれてきた水族館「志摩マリンランド」(阿児町神明)が3月末で営業休止を迎えた。県南部を代表する観光施設の一つとして地域を支え続けたが、近年のレジャー多様化に伴う観光客減少に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちとなった。

同館は昭和45年3月に開館。看板のマンボウやペンギンの飼育のほか、ミズダコやパラオオウムガイの世界初の繁殖成功などで知られているほか、平成13年に開催されたハゼの特別展には上皇ご夫妻が訪れたことも話題になった。

回遊水槽での海女の餌付け実演なども人気を集め、ピーク時の昭和57年度には、賢島を訪れる観光客を中心に約40万人が来館した。しかしレジャーの多様化などに伴い、観光客は年々減少。伊勢志摩サミットが開催された28年度は約16万4千人が来館したが、その後は15万人程度を推移し続けた。

昨年3月には開館50周年を迎えたが、新型コロナウイルスの感染拡大により休館を余儀なくされ、無観客で静かに周年を祝った。

運営元の近鉄レジャーサービスは営業休止を決定した理由について、「施設の老朽化が著しく、これ以上の維持管理が困難になったと判断した」と説明している。コロナ禍で来館者の減少に拍車が掛かったことも要因の一つとみられる。

3月に開催された最後の特別展では、飼育員が厳選した58種類の生き物を展示。館内に置かれたメッセージコーナーには、壁一面を覆い尽くすかのように多くの来館者から感謝や別れを悲しむメッセージが寄せられた。

営業最終日となった3月31日には、県内外から多くの人々が訪れ、別れを惜しんだ。閉館後にはスタッフ全員が館外に整列し、手を振りながら訪れた人々を見送っていた。

水族館施設の今後の活用の在り方については現時点では未定としている。一方で、館内で飼育していた約500種7千匹の生き物は10月末までに、鳥羽水族館や伊勢シーパラダイスなどの近隣施設をはじめとした全国約20カ所の施設に移送する手続きが完了した。

海の生き物に関する専門書籍や研究論文など2万点以上の書籍や資料は鳥羽市立海の博物館と志摩市立図書館へと譲渡された。化石や鉱物といった研究資料は県総合博物館に移されたほか、入り口で利用客を出迎えたマンボウのモニュメントは紀北町の道の駅「紀伊長島マンボウ」に引き継がれることが決まった。

飼育員らスタッフも近鉄グループの系列会社に異動。館長を務めてきた里中知之さん(55)も11月6日付で近鉄レジャーサービス営業推進部に異動した。里中さんは「多くの方の協力によりスムーズに移送手続きが完了した。うまく活用いただけたら何かを残せたという気がする」と話した。

同館で平成27年から「高校生水族館」の展示を続けてきた県立水産高校(志摩町和具)では、展示してきた生き物と共に、国天然記念物の「ネコギギ」を譲り受け、繁殖に向けた取り組みを進めている。

同水産資源科アクアデザインコース二年生の鈴木佑那さん(17)は「地元に一つしかない水族館。思い出があるところでなくなるのはすごく悲しかった」と営業休止を振り返り、「絶滅させないよう、保存に向けてできることをしていきたい」と力強く語っていた。