文芸家藤井鬼白にスポット 生誕150周年で冊子発刊「三重文壇の国宝的存在」

【「藤井鬼白の魅力とその世界」を出版した諸岡さん=菰野町田光で】

【三重郡】郷土が生んだ文芸家藤井鬼白(本名・喜一、1872―1949年)の生誕150周年を前に、その功績を後世に伝承する冊子「藤井鬼白の魅力とその世界」がこのほど発刊された。菰野町田光の郷土史家で藤井鬼白顕彰会代表の諸岡忠至さん(78)が、顕彰会員や地元有志らの協力を得て執筆した。

A4判、全カラー109ページ。鬼白の経歴や文芸家としての功績、朝上小近くに建つ胸像などを資料と写真で紹介。また、鬼白の子孫や地元住民らを取材し、新たに見つかった自作の短歌や俳句をしたためた墨書を含めた75点を収録している。

鬼白は田光村(現・田光)で生まれ育ち、地元で教職に就いた。朝上尋常高等小学校(現・朝上小)で25年間校長を務める傍ら文芸家としても活動し、短歌、俳句、漢詩、随筆、書道の五分野で活躍した。短歌では作品二首が「昭和万葉集」に掲載されている。明治後期には、歌人伊藤左千夫を湯の山温泉に招待して歌会を開き、景勝を詠んだ伊藤の短歌がきっかけで、湯の山の名が全国に広まったという。

鬼白に興味を持ったのは10年ほど前、鬼白の孫で幼なじみの故木根夫さんから「家に残っている祖父の墨書50点を活用してほしい」と委託されたのがきっかけだった。墨書の整理と解読、鬼白について調査を進めるうち、短歌をはじめとする5分野それぞれで高い評価を得ており、三重文壇の国宝的存在だったことを知った。彼の功績を埋もれさせてはいけないと、1年半かけて出版にこぎ着けた。

冊子は菰野町や図書館、町内の小中学校などに寄贈する。諸岡さんは「地元でも鬼白を知る人は少ない。多くの方々の力を借りて彼の遺した作品を世に出すことができて感慨無量です。冊子を通して、地域の文化を次世代に継承できればうれしい」と語った。問い合わせは諸岡さん=電話090(4850)3404=へ。