<1年を振り返って>一見県政がスタート 国体中止を判断

【花束を手に当選を喜ぶ一見氏=9月12日、津市栗真町屋町で】

鈴木英敬前知事の辞職に伴い、9月12日に投開票された三重県知事選。与野党の推薦を受けた元国土交通省自動車局長の新人、一見勝之氏(58)が他の2候補に大差を付けて勝利し、初当選を果たした。

新型コロナウイルスの緊急事態宣言下でスタートした一見県政。当選の喜びもつかの間、就任早々に三重とこわか国体・とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)の開催可否判断やコロナ対応に追われた。

注力するのは目下の対応だけではない。令和5年度末で期限を迎える長期計画「みえ県民力ビジョン」をはじめ、県の計画や方針を見直す。新たな長期計画は来年6月にも完成させる。

就任時に語った通り、公務では「誠心誠意」を重んじる姿勢が垣間見える。県議会の答弁では原稿を読まず、自らの言葉で語る。知事選で対立した共産党の議員にも「納得してしまう」と言わせたほどだ。

知事選でアピールしていた海上保安庁時代の危機管理経験も生かそうと努めているようだ。財政課が財政調整基金への積み立てに関する事務作業を失念していた問題への対応が、その一例だろう。

事務方は定例記者会見の質問に備え、この問題に関する「想定問答」を用意していたが、一見知事は会見冒頭で自ら謝罪した。ある職員は「前知事なら、あの程度の問題で謝りはしなかっただろう」と語る。

一方、かねてから志したわけではなかったこともあってか、政治家としての自覚にはいささか欠ける面も見て取れる。「腰の低さ」は好印象を与えつつ、政治家としては「弱腰」とも捉えられかねない。

象徴的だったのは、先月29日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策協議会での一幕。医師会などの幹部が一堂に会する場で「事務局の私が上席にいて良いのか」と述べ、座席を見直す考えを示した。

ところが、政治家としては大先輩に当たる亀井利克名張市長が「知事は最終的な判断を担う者として座長の隣にいるべき」と指摘。一見知事は「亀井市長のおっしゃる通り」と発言を撤回した。

その後の定例記者会見でも、協議会での発言に絡んで「政治家として」の認識について問われると「知事ですから」と控えめに語っていた。「政治家」という言葉は、まだ板に付いていないようだ。

就任から100日間はメディアが批判を自粛する「ハネムーン期間」とされるが、それも今月まで。「一見カラー」をいかに打ち出し、県民から理解と信頼を得られるかが今後の焦点となりそうだ。