三重県議会一般質問 ビジョンない予算を問題視 知事理解求めるも平行線

三重県議会11月定例月会議は8日、中嶋年規(自民党、5期、志摩市選出)、喜田健児(新政みえ、1期、松阪市)、服部富男(自民党、5期、三重郡)、中村進一(新政みえ、7期、伊勢市)の4議員が一般質問した。中嶋議員は新たな長期ビジョンが整うまでに新規事業を盛り込んだ来年度当初予算案を提出する県の方針を問題視。一見知事は「既に進めている長期ビジョンの議論に基づいて予算を始動させたい」などとして理解を求めたが、中嶋議員は「議会は単なる追認機関ではない」と反論し、両者の主張は平行線をたどった。

■県民と知事の関係性は ― 中嶋 年規議員(自民党)

歴代知事が掲げた基本理念を紹介した上で、県民との関係性に対する考えを尋ねた。一見知事は県民が積極的に関わる「リアル・デモクラシー」や「県民参加型」の県政を進める考えを示した。

【関係性】
中嶋議員 北川県政では「生活者起点」で情報公開を進め、野呂県政は「新しい時代の公」として県民との情報共有を重視した。鈴木県政は「幸福実感度日本一」に向けて県民との協創に取り組んだ。一見県政における県民との関係性は。

知事 「強じんな美し国三重」の実現には県民の協力が欠かせない。一人一人が議論して行動するリアルデモクラシーや県民参加型の県政を考えたい。そのためには県民からの信頼が大事。あらゆる声を受け止めるため、県民とのコミュニケーションを図りたい。

【長期ビジョン】
中嶋議員 来年度当初予算の提出が、長期ビジョンや中期計画の議決に先行するのはいかがなものか。それなら新規事業はビジョン策定後の補正予算で審議されるべき。単年度計画も長期ビジョンと中期計画の策定後に確定すべき。

知事 仮に単年度計画の始動をビジョン策定後にすれば、来年4月以降の計画が空白になる。既に進めているビジョンの議論に立脚し、来年4月から単年度計画と予算を始動させたい。平成23年6月にも単年度計画を提案したが、当時もビジョンがなかった。

■児童精神科予約対応は ― 喜田 健児議員(新政みえ)

児童精神科の初診予約が取りづらい状況になっていると指摘し、県の対応を尋ねた。県当局は地域の医療機関でも診療を担ってもらえるよう、小児科医対象の講座を開くなどして対応していると報告した。

【財政運営】
喜田議員 県は厳しい財政状況を踏まえて来年度当初予算案で要求額にシーリングをかけつつ、予算の増額を認めている。県職員の前向きな取り組みを引き出すために重要なことだと思う。例年にない増額要求を認めた理由は。

高間総務部長 厳しいマイナスシーリングを続けてきたことで、事業の拡大や新事業の構築が難しいとの声が聞こえてきた。このため、来年度当初予算の要求では従来の手法を見直すことにした。前向きに事業を企画しようとする職員の意欲を引き出したい。

【児童精神科】
喜田議員 強迫症の子を持つ保護者が子ども心身発達医療センターに電話したが、本年度の初診予約は既に終了していた。次の病院でも3カ月待ち。緊急性が高くても初診の予約が取れなくなっている。医療体制整備への考えは。

中山子ども・福祉部長 センターは診療の枠を増やしているが、初診待機の解消には至っていない。小児科医を対象とした発達障害の講座を開き、新たに4つの小児科で診療の協力を得られるようになった。今後も診療が可能な小児科医を地域で確保したい。

■コロナ大6波の備えは ― 服部 富男議員(自民党)

新型コロナウイルス感染者の健康観察などに当たる保健所の職員が第5波で不足した問題を踏まえた対応を尋ねた。県当局は第6波に備え、感染拡大時に保健所に派遣する350人の職員を事前に確保したと報告した。

【保健所対応】
服部議員 第5波では保健所に「早くしてくれ」という声や厳しい指摘など、多くの問い合わせがあったのでは。感染拡大時の対応を想定できていなかったと思う。オミクロン株の拡大も懸念される中で、準備が必要。どう対応するか。

加太医療保健部長 保健所には本庁からの応援や会計年度任用職員の配置、市町の協力、定数の増員などを図ったが、第5波では職員が足りなかった。このため、第6波に備えて感染拡大時に即戦力として保健所に派遣する350人の職員を確保した。

【部活動】
服部議員 国は学校の働き方改革などを目的として休日の部活動を地域に委ねる「地域移行」を段階的に進める方針だが、小さな町は指導者の確保が難しく、費用負担や管理、責任などのあり方が明確になっていない。県の対応は。

木平教育長 本年度から伊賀市、大台町、菰野町にある4つの中学校で休日の部活動を地域に委ね、生徒や保護者の満足度などを検証している。一方、地域移行は受け皿の確保や誰が費用を負担するのかという課題もある。市町と連携して段階的に取り組む。

■児童虐待への認識は ― 中村 進一議員(新政みえ)

鈴鹿市で小学2年の長男(7つ)を椅子で殴ってけがをさせたとして、父親(27)が傷害の疑いで逮捕された事件への認識を尋ねた。県当局は「事件を重く受け止める」とし、再発防止に努める考えを示した。

【一時保護】
中村議員 鈴鹿市で長男の顔にけがをさせた疑いで父親が逮捕された。長男の一時保護を解除していたことについて、知事は「適切だった」と述べたが、警察は日常的な虐待があったとみている。一時保護の解除を適切に行う仕組みは。

中山子ども・福祉部長 児童虐待の疑いがあれば、ちゅうちょせず保護している。家庭への復帰も子どもの安全を最優先とし、復帰後も関係機関が分担して家庭訪問を繰り返している。事件を重く受け止め、有識者の部会で振り返るなど、再発防止に努める。

【デジタル】
菅内閣でデジタル改革関連法が成立し、行政手続きのオンライン化が進められている。国は全国の自治体システムを一元化するようだが、私にはマイナンバーを急ごうとする国の焦りとも取れる。自治体のデジタル化を急ぐ目的は。

三宅デジタル社会推進局長 新型コロナの給付金に関する手続きにより、デジタル化の遅れが明らかになった。コロナ前から人口減少で労働力が不足し、複雑化するニーズに対応するには既存の業務を見直す必要があった。早急にデジタル化を進める必要がある。

<記者席 ― 議会の一枚岩を示す狙いか>

○…一見知事が予定するビジョン策定と当初予算提出の順序について「看過できない」と批判した中嶋議員。さすが、議長時代の会見で知事就任に意欲を示しただけのことはある。

○…ただ、質問は「三谷議員にあおられた」と明かし、最後は「三谷議員、これでよろしいか」。他党の重鎮を挙げたのは議会の一枚岩を示す狙いか、それとも発言の「責任転嫁」か。

○…近ごろ議員から鈴木前知事への批判が相次いでいるようで、この日も喜田議員から「前知事のトップダウンが強すぎて職員の積極性が引き出せなかったのでは」との発言が。

○…一方、総務部長を「こわもてでも優しい」、財政課長を「しなやか」などと、現体制を高く評価。前知事に対する苦言の直後に褒められた職員は、気を引き締めたに違いない。