2021年11月11日(木)

▼「失念」「41億円」に「県庁」とくれば、落語の三題ばなしとして格好の「題」ではないか。「人物」「品物」「場所」の三つの題を客席から出してもらって一話にまとめる。江戸時代に始まり、今に残る名作も多いが、迷作にはなりそうだ

▼県は本年度予算に前年度の県税収入の一部を繰り越す会計処理を失念していたという。「一部」が41億円で「不用額」にしてつじつまを合わせる。厳しい財政を理由に国体の延期も断念されたが、一段落したら〝埋蔵金〟が見つかったということか。県財政への影響はなく「予算の適切な執行に努める」(総務部)。秀逸な〝落ち〟になっている

▼「(前)知事の国政転出は決まりか」「ばらまき予算廃止のチャンスだ」「聖域なき中止をせんと」「問題は理由だな」「巨額の繰越金があってはまずいぞ」「不適正な会計処理で陳謝という手はどうか」「またかと言われるのも屈辱だなあ」「再発防止策も作らんとならんし」「忘れてましたというのは」「いつものように頭を下げて風が通り過ぎるのを待ちさえすれば、特に何かをする必要もないか」

▼「適切な執行に努める」で一話できあがり―。散文的なのは才能不足だが、題が仕事柄、県ならありそうな気がするからかもしれない。奇抜な連想力が働かない。決算段階で不用額が多発したことがある。見通しが甘かったか、努力が足りなかったか。「執行できないのは問題」と議会に散々追求された。そのために断念させられた事業も多いからだ

▼「隠し玉のつもりでした」の方がいいか。〝落ち〟はいろいろ浮かぶ。