<伊勢市政の課題・下>浸水害防止へ対策強化 国・県と連携、先行事例に

【堤防のかさ上げ工事後の勢田川流域=伊勢市吹上二丁目で(同市提供)】

ちょうど前回の三重県伊勢市長選・市議選の告示日に重なる平成29年10月22日から23日にかけて、伊勢市では台風21号に伴う豪雨災害が発生。甚大な被害をもたらした昭和49年7月の「七夕豪雨」の累積雨量を上回る観測史上最大の累積584ミリの雨に加えて満潮や高潮も影響し、勢田川や桧尻川流域を中心に河川が氾濫した。

これにより、市内では死者1人、床上浸水409戸、床下浸水670戸、店舗や倉庫などの浸水773戸の被害が発生(30年3月調べ)。被害は矢田川や汁谷川周辺を含む広範囲に及んだため、17年の市町村合併後初めてとなる「災害救助法」「被災者生活再建支援法」の適用対象となったほか、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(激甚災害法)」にも指定された。

氾濫原因として、河川の流量や排水ポンプの排水能力に限界があったことが考えられたことから、市は県や国と共にハード・ソフト一体での浸水対策に当たるために30年1月、「勢田川流域等浸水対策協議会」を設立。5年後程度を見越した短期計画と、20―30年後の中長期計画による実行計画を策定し、取り組みを進めてきた。

これまでハード面として、勢田川流域JR参宮線橋梁部付近や北新橋右岸下流付近の堤防かさ上げや数十センチの特殊堤防設置工事を実施。勢田川と桧尻川では、河道掘削工事を実施して土砂を排斥することで流下能力の向上を図ったほか、排水機場ポンプの能力向上に向けた改修工事を実施した。

ソフト面では、市内43カ所に危機管理型水位計を設置。あらかじめ設定した観測開始水位を基準に、設置河川の水位の動向を河川管理センターに通達することでパソコンやスマートフォンを通じて24時間確認できる仕組みといい、時間当たりの予測も確認できるため避難時の目安としても活用できるという。

また令和2年9月からは、国による「簡易浸水センサ等を用いた浸水状況共有システムの現場実証」として、市内の電柱やカーブミラーなど33カ所に浸水状況を2段階で確認できる簡易型浸水センサを設置。危機管理型水位計と組み合わせることで、市内河川の氾濫や浸水状況をリアルタイムで確認できる仕組み作りを目指してきたとしている。

国や県、市が令和2年度までに実施してきた対策の概算事業費は13億4600万円に上る。

市危機管理部の宮本晃部長は「流域治水の考え方で市だけでなく国や県、流域関係者らと一丸で対策を進めてきた経緯は全国でのモデルケースとして取り入れられている」とし、「今後はいかに計画完成に向けて予算を確保できるかどうか。住民の防災力向上に向けたソフト整備も必要になる」と話す。

鈴木健一市長は「危機管理型水位計の設置など避難ツールを展開する防災DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めてきた。今後も大きな目玉として進めたい」と話している。