<伊勢市政の課題・中>コロナ後向け観光戦略 途切れた客、回復へ企画募集

【伊勢国際観光が企画したバリアフリーをテーマにしたオンラインツアー=伊勢市内で(伊勢市観光協会提供)】

平成25年の伊勢神宮式年遷宮をきっかけに伊勢神宮内宮・外宮への参拝者数は右肩上がりで推移。中でも令和元年は改元による祝賀ムードも影響し、過去3番目に多い数字となる972万9616人の参拝者数を記録した。

しかし翌令和2年、全国的な新型コロナウイルスの感染拡大により状況は一変。緊急事態宣言の発令や県をまたいでの移動自粛などが影響し、参拝者数は前年比7割の553万7811人にまで減少。中でも5月は記録上初めて5万人を下回る4万536人を記録した。

観光を基幹産業とする伊勢市の打撃は大きく、市観光振興課によると、観光客実態調査を基とした令和2年の観光消費額推計値は対前年比42・8%減の356億8千万円。緊急事態宣言の影響により今年はさらに消費額が落ち込む見込みとしており、3―9月の観光消費額は対前年比19・2%減の83億7千万円と推計している。

市は令和2年度、定額給付金に中小事業者への感染拡大阻止協力金などを盛り込んだ補正予算として約154億6804万円を計上。今年度も9月現在、約30億3396万円の補正予算を計上した。

9月議会では、伊勢への来訪者に手紙や情報などを届ける「伊勢つながるキャンペーン事業」を提案。市観光誘客課の担当は「今後は一時的なキャンペーンだけでなく、いかに途切れたリピーターをつなぎ直していけるかが重要」と話す。

アフターコロナを見据えた観光戦略として、市と伊勢市観光協会は旅行予約サイトを運営するベルトラ社(東京都)と連携して「オンラインツアー等造成促進事業」を企画した。市内事業者を対象に開催した講座受講者の中からそれぞれの持ち味や特性を生かしたオンラインツアーやイベント企画などを募集し、助成を図る取り組みで、4事業者が名乗りを挙げた。

今月7日、事業第一弾として、市内で貸し切りバスを運営する伊勢国際観光(下野町)による「車椅子・介護者視点の二角度から見る伊勢の新感覚バリアフリーツアー 日の出旅館・二見浦訪問」が開催された。

ツアーを企画した同社営業運行管理部長の橘俊亮さん(43)は、「団体の利用客しかなく、正直他のどの業界よりも打撃が大きかったと思う。GOTOトラベルキャンペーンの恩恵も少なく、何とか厳しい状況を打開して、少しでも収益に寄与できればという思いがあった」と参加理由を語る。

企画では、日の出旅館(吹上一丁目)のバリアフリールーム体験や女将へのインタビュー、バスでの移動を経て二見浦海岸にある参道のスロープなどを散策する様子を紹介。介護者と車いす利用者の2つの視点を交えて紹介することで、車いす利用者が本当に求める配慮が何かについて問いかける狙いも込めた。

橘さんは「例えば修学旅行に向けた学校側への事前説明用ツールとしての利用など、可能性を感じた」と手応えを語る。次回ツアーでは食品を扱う他業種とのタイアップ企画なども検討しているという。一方、「リアルに勝る部分はなく、収益として成り立つかは厳しいという認識。他業種とのネットワーク作りなど、付加価値に期待できたら」と慎重な姿勢も示した。

伊勢市観光協会の西村純一専務理事は「主催者側とチャットなどを通じて双方向で話せる臨場感が強み。オンラインならではの仕組みを構築できれば将来につながる」と期待を寄せる。