南伊勢町政の課題 「町消滅」の危機 若者移住へ空き家活用

【若者の移住定住に向けた情報発信等に取り組む西川さん=南伊勢町内瀬の事務所で】

町域の約六割が伊勢志摩国立公園内にあり、特徴的なリアス海岸をはじめとした豊かな自然に囲まれた風光明媚(めいび)な地、南伊勢町―。一方で高齢化率、少子化率は共に三重県内市町で最も高く、人口減少は避けては通れない課題となっている。

同町では約60年前の昭和35年をピークに、人口減少が続いている。平成27年の総人口1万2788人を基に、国立社会保障・人口問題研究所が算出した30年後の人口推計は、約3分の1に当たる3892人。人口減少率は70%を上回り、同規模の自治体としては全国で最も高いとされている。中でも年少人口(0―14歳)は860人から111人に減少。町を支える生産年齢人口(15―64歳)も、5645人から1008人にまで減少する見通しで、文字通り「消滅」の危機に直面している。

こうした背景を受け、町は令和元年9月、人口回復に向けた総合計画「新絆プラン」を策定。10年単位で人口減少の抑制を図り、最終的に2045年の年少人口を700人にまで回復させることを目標としている。

「最初の10年のV字回復戦略」として、町が力を注いでいるのが若者の移住や定住に向けた取り組みだ。

町は平成27年、空き家バンク制度を創設した。町内にはアパートなど移住者向けの物件が少ないことから、移住希望者の選択肢の一つとして高齢化などで増加傾向にある空き家の有効活用を図る考えで、各種補助金制度も用意している。

町まちづくり推進課によると、町内の空き家軒数は制度創設当時の893軒に対し、今年3月現在で1761軒に増加。うち空き家バンクの登録件数は124件で、これまでに70件が成約した。

空き家の中には損傷が激しかったり片付けが進んでいなかったりと、廃虚同然の物件もある。また見ず知らずの移住者に物件を貸すことに難色を示す所有者もあり、ミスマッチの解消も課題となっている。

町は今年度から空き家の所有者を対象に、ごみの処理や簡易な修繕費用として5万円を支給する補助制度を創設するなど、利用率向上への取り組みを進めている。

同課まちづくり定住係の担当者は「これまでは売却が中心だったが、今後は賃貸の成約も進めていけたら」と話している。

令和元年8月に移住定住コーディネーターとして町から委嘱を受けた西川百栄さん(46)。現在は「むすび目Co―working」と題して、空き家バンクの利用促進や町の情報発信などに取り組んでいる。

新型コロナウイルス感染拡大の影響からか、首都圏を中心に問い合わせ件数は増加傾向にあるという。リモートワーク需要や田舎暮らしへの憧れの一方で、移住後の生活に対する理解不足から、地元住民とトラブルになるケースは少なくない。また生活難から一時的に逃れるための「駆け込み寺」としての利用を求める問い合わせも多いという。

西川さんは「空き家に人が入るだけで町の雰囲気が明るくなる。一方で誰でも良いというわけではなく、地元住民への配慮は必要。ハードルは高いが、サポート体制を含めてうまく動かせる仕組みができれば人口増加にもつながっていくのでは」と期待を寄せる。