<三重県知事選 県政の課題・下>財政、使える予算「ほとんどなし」 国体延期可否、迫られる判断

【三重とこわか国体・とこわか大会を取り上げた県の広報紙。中止決定後の差し替えが間に合わずに「お知らせ」の文書を添えて発行した。】

「新しい知事が自由に使い道を決められる予算なんて、ほとんど残ってないですよ。今の県政で知事を務めていく面白みはないでしょうね」。ある職員は、まるで県庁の総意であるかのように語った。

その背景にあるのは県の財政難。人件費などの義務的経費を除いた政策的経費は本年度予算で32億円ほど。このうち「事実上の継続予算」を除くと、知事が采配できる予算は15億円にとどまる。

財政に影響を与えたのは社会保障費の増大や景気の悪化といった全国的な事情だけではない。伊勢志摩サミットや菓子博、インターハイなど、県が近年の大規模イベントに投じた費用は約190億円に上る。

三重とこわか国体・とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)もその一つ。平成24年度以降、関連費用として136億円を計上した。国からの補助金はほとんどなく、ほぼ全額を独自で賄ってきた。

その両大会、結局は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止に。延期の場合は令和9年の開催が見込まれるが、財政課は「当然にして財政状況は延期の可否を決める重要な判断材料となる」との姿勢だ。

一方、県の両大会局は中止によって支出の必要がなくなった経費や延期の場合に必要な予算を「まだ精査中」として明らかにしていない。延期の判断までに公開するかどうかも「分からない」という。

関係者によると、両大会の中止によって支出の必要がなくなった開催経費は、多く見積もっても約30億円程度。延期する場合は少なくとも約100億円の予算を新たに計上する必要があると見込まれる。

そもそも両大会の開催経費は、借金の返済に向けた積み立ての先送りや企業庁の電気事業会計清算金といった「奥の手」で賄ってきた。財政担当者は「これ以上、大きな予算は工面できない」と語気を強める。

県財政は苦しい局面を迎える。県債残高は令和5年度末時点で初めて1兆5千億円を超える見通し。借金返済の積み立て不足は149億円に上る。新型コロナの感染拡大による税収悪化も懸念される。

両大会を延期する場合は中止の決定から1カ月以内に申請する必要があるという。そのタイムリミットは26日。新たな知事は就任からまもなく、重大な判断を迫られる。多額の借金を抱えながら。