<三重県知事選 県政の課題・上>感染急増、入院できず コロナ以外の患者にも影響

【式典などに使われる講堂は感染症対策本部の事務所に様変わりした=三重県庁で】

「うちはとっくの前から満床。これ以上の受け入れは物理的に不可能だ」。新型コロナウイルスの入院患者を受け入れている三重県内の病院で勤務する30代の男性医師は取材に対し、医療現場の窮状を訴える。

男性によると、院内では常時、20人を超える感染者が入院。外来担当の医師や看護師らも昼夜を問わず治療に当たっている。「基礎疾患がない若者も急に症状が悪化するため、全く気が抜けない」という。

ただ、男性が訴える「窮状」は、医療従事者の疲弊ではない。コロナ以外の患者に与える影響だ。院内ではコロナ対応を理由に入院を遅らせたことで、患者が死亡したケースが複数あったと明かす。

男性は「もう少し早く受け入れていれば、あの命は救えたはず。コロナ禍でなければ」と悔やむ。「感染者でなくても入院できる人とできない人がいる。医療の不平等感が広がっているのが実態だ」

県内では先月上旬からの「第5波」で感染者が急増し、これに伴って病床使用率も上昇。先月12日からは、政府の指標で最も深刻な「ステージ4」の50%を超え続け、6日は過去最高の69・2%に上った。

自宅療養者も急激に増加した。先月18日に初めて千人を超え、その10日後には4千人を突破。既に3人が自宅療養中に死亡したほか、1人が症状悪化を受けた救急搬送の翌日に死亡している。

この事態を受け、県は先月30日付で、県内全ての病院に対し、感染症法に基づく病床確保の協力要請を実施した。ただ、新たに確保できる見通しは今のところ37床程度。全体の1割増にも満たない。

「いくら要請されても入院患者の受け入れには乗り出せない」と語るのは、県内の病院で勤務する男性職員。「ただでさえ発熱外来には多くの患者が訪れる。感染者を受け入れる人員も設備もない」と話す。

保健所の逼迫(ひっぱく)も深刻だ。県内では先月下旬から、多くの保健所が検査対象を症状がある濃厚接触者を優先する方針に転換した。ある担当者は「正直に言うと検査でさえも選別せざるを得ない」と明かす。

次期衆院選に向けて12日付けで辞職する鈴木英敬知事は先月26日の記者会見で「これほどのカーブで感染が拡大するとは想定していなかった」と語った。感染拡大の不安が渦巻く中、コロナ対策は次の知事に託される。