<三重からパラへ>陸上 前川楓と伊藤智也 前川「自分の力発揮を」 伊藤「経験生かす」

【東京パラリンピック出場を決めて県庁を表敬した(左から)伊藤智也、前川楓両選手=5日、三重県庁で】

東京パラリンピックの陸上競技には津市出身の前川楓(23)=大阪府在住、新日本住設=と、鈴鹿市在住の伊藤智也(58)=バイエル薬品=の2選手が出場する。パラリンピックをはじめ国際競技大会への出場経験が豊富で、三重のパラアスリート界もけん引する2人は、コロナ禍を経てなお進化した姿を東京大会で見せると意気込む。

片大腿義足クラスで2016年のリオ大会女子走り幅跳び4位、同100メートル7位の前川は新型コロナウイルスの影響による東京大会1年延期をチャンスと捉えていた。男子走り幅跳びで08年の北京大会から4大会連続パラリンピック出場で、北京とリオで銀メダル獲得の山本篤選手(39)=静岡県出身=の下で練習するため、昨年活動拠点を大阪に移したからだ。

「すごい選手の動きを見て、まねして、うまくいかなかったら聞く」。その繰り返しで「がんと記録が上がってきた」。100メートルの目標は「決勝に行けたら」と控えめだが、走り幅跳びは「メダルに届くか届かないか、ぎりぎりのライン」と手応えを示す。

中3の交通事故を経て高校から義足で陸上を始めた23歳は「トップ選手に比べたら義足の使い方もまだまだ。もっともっといろんなことをやっていきたい」と話す向上心の塊だ。リオで届かなかった五輪のメダルに憧れをにじませながら「一番の目標は自分の力を発揮すること。それでメダルに届かなかったとしても、それ以上の力を出せなかっただけなので、また頑張るだけ」と前を見据える。

車いすクラスの100メートル、400メートル、1500メートルに出場する伊藤は新境地で4度目のパラリンピックに挑む。12年のロンドン大会後、一度は引退したが、F1チームとスポンサー契約も結ぶ企業から競技用車いすの開発への協力を依頼されたことをきっかけにテストドライバーを兼ねて現役復帰。自身の成績がプロジェクトの成果に影響を及ぼすこともあり「新しい挑戦」に闘志をかき立てる。

引退の間に強力なライバルたちが台頭。中でもリオ大会で男子400メートル、1500メートルの2種目で準優勝の佐藤友祈(31)=静岡県出身=は両種目の世界記録保持者だ。自己免疫疾患の多発性硬化症の伊藤にはコロナの影響も重大で「おととしの12月から家を出ていない」。競技会の中止で実戦の機会も失われている。

それでも04年のアテネ大会から3大会連続でパラリンピックに出場し、北京大会で400メートル、800メートルの2種目で金メダルに輝いた“レジェンド”は動じない。「試合ができなくても世界ランキングのタイムを照らし合わせて自分の位置を把握しながら練習している。(本番も)経験を生かして臨みたい」と現状を冷静に捉える。(連載おわり)