鈴木知事が辞職表明 衆院選出馬、来月知事選 三重

【定例記者会見で辞職を表明する鈴木知事=三重県庁で】

鈴木英敬三重県知事(46)は5日の定例記者会見で、次期衆院選三重4区に自民党公認で立候補するため、来月12日付で辞職すると表明した。「各方面から出馬の要請を受けて決意した」と説明。任期半ばでの辞職には「申し訳なく思う」と陳謝しつつ「地方や現場の経験を国政で生かしたい」と語った。後継指名は否定する一方で「行政を経験した人が良い。意中の人はいる」と語った。

鈴木知事は「コロナ禍で国政と国民の距離が離れ、信頼が低下している。とりもなおさず地方や暮らしの原点を思い浮かべることが重要だと考え、地方や現場での経験を国政に生かしたい」と述べた。

辞職の決断は「悩みに悩みに悩んだ。大きな葛藤もあった」としつつ「多くの首長や医療関係者、商工会議所、商工会などから出馬要請を受けた。地域の熱い気持ちを重く受け止めて覚悟を決めた」と語った。

辞職の時期は、知事選の投開票が来月12日と想定されることを踏まえて決めたと説明。「(辞職まで)コロナ対応に万全を期す。新知事誕生のぎりぎりまで責任を果たし、空白をつくらない」と強調した。

1年半の任期を残しての辞職について「これまで任期を全うすべく、と答えてきた。結果的に任期を全うできず申し訳なく思う」と陳謝。「感染状況が厳しさを増す中で引き続き全力を挙げる」と語った。

コロナ禍での辞職に対する批判は「真摯(しんし)に受け止める」とした上で「新しい立場をいただいて結果を積み重ね、中長期的に振り返れば『判断は間違っていなかった』と実感してもらえるよう努める」と語った。

次の知事にふさわしい人物像は「県民を愛して信じる方が良い」と説明。「意中の人」については「結果として、その人が立候補するかは分からない。会話はしたことがある」と述べるにとどめた。

また、鈴木知事は会見に先立ち、県議会議事堂で青木謙順議長に辞職願を手渡した。青木議長は公選法に基づき、県選管に辞職願の提出を通知。県選管は6日の臨時会で知事選の日程を決める。

三重4区を巡っては、自民党の三ツ矢憲生氏が今期限りでの引退を表明。立憲民主党の新人で元三重テレビアナウンサーの坊農秀治氏(49)と、共産党の新人で元津市議の中川民英氏(53)が立候補を表明している。

鈴木知事の辞職に伴う知事選は26日告示、来月12日投開票の見通し。国交省の元キャリアで亀山市出身の一見勝之氏(58)と元県議の岡野恵美氏(69)が、いずれも無所属で立候補する方針。

 

■任期半ば、批判避けられず “感動的会見” コロナ対策は?■

定例記者会見で辞職を表明した鈴木英敬知事。伊勢志摩サミット誘致などの功績を振り返ったり、目を潤ませたりと、感動的な〝演出〟を施したが、任期半ばでの辞職に対する批判は避けられそうにない。

会見での表情は豊かだった。「国政を進められるリーダーは鈴木英敬のほかにいない」と恥ずかしげもなく支援者の声を引用したと思えば、久しぶりに父と連絡を取ったと涙を浮かべて明かす場面もあった。

一方、記者は穏やかではなかった。日頃は「質問」に徹する若手記者も「任期を全うしてコロナ対策に当たることが重要」と苦言。「前回知事選で得た60万票の負託に応えられているのか」と迫る声もあった。

インターネット上の投稿でも、任期半ばでの辞職を伝える報道に「コロナ対策を投げ出したと言われても仕方がない」といった指摘が相次ぐ。「選挙民への大いなる裏切り」といった厳しい批判も上がる。

その反面、県庁内は冷ややかな反応だ。ある県職員は取材に「いつかは出ると皆が思っていた。驚きは全くない」ときっぱり。別の職員も「もう少し良いタイミングはなかったのだろうか」と語るぐらいだ。

もちろん鈴木知事も辞職への批判や庁内の反応は想定済みだろうが、果たして「判断は間違っていなかった」と言われる時は来るのか。ある職員は「国会で埋没しないことが秘訣(ひけつ)でしょうね」と推し量った。