デジタルを地方創生に CDO就任の田中氏が抱負 三重

【インタビューに答える田中氏=津市内で】

三重県が公募した最高デジタル責任者(CDO)に1日付で就任。「あったかいDX(デジタル・トランスフォーメーション)」をテーマに、デジタル技術を活用した地域活性化や幸福実感度の向上を目指す。一方、10歳でプログラミングを学び、高校中退後に独立したという経歴も。CDOとしての抱負やDXにかける思いを聞いた。

―CDOに応募した動機は。

IT畑から地方創生に取り組んできた経験を三重で生かせると考えました。三重には世界最高レベルの自然や食など、他の地域に比べて圧倒的な魅力があります。以前から三重が好きで興味があったんです。2015年から4年間、少子化対策関係の仕事で県内を巡り、特に南部の自然が豊かで素晴らしかった。昨年2月に結婚したときも、桑名でハマグリを食べたり、伊勢神宮を参拝したりしたんです。

―生い立ちを教えてください。

父が大手広告代理店でインターネット関連事業の立ち上げをしていたんです。当時は世間で全く言われていなかったITやイノベーションの話を父から聞かされていました。「コンピュータとネットワークの時代が来るぞ」と言われ、十歳のころからプログラミングをさせられたりしていました。

―高校を中退して独立されたそうですね。

当時、アメリカの有名な起業家たちも大学を中退していたということもあり、大学に進学しなければいけないという強い思いはありませんでした。高校時代はラグビーに打ち込んでいましたが、体の調子が悪くなって部活をやめたら学校に通うモチベーションが下がってしまい、中退。16歳でアルバイトをして一人暮らしをしました。その後はクリエイティブな人たちと多く出会い、渋谷の大型ビジョンに映す番組を作ったりして、その後、AIを活用した音楽推薦システムの開発をきっかけに起業しました。今思えば大学に進学する努力をしておけば良かったとも思いますが、エリートとかけ離れた人生を送ってきたからこそ、さまざまな痛みや弱さを自分ごととして考えられるのかもしれないと思います。

―三重での暮らしはいかがですか。

妻との二人暮らしで、三重に引っ越したタイミングで犬を迎えました。ペットが飼えるアパートなんですが、築40年。道具や資材を買ってDIY(日曜大工)で自分なりにカスタマイズしたりしています。趣味は食です。早速、車でいろんなところに食べに行っています。

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―デジタル社会推進局への感想は。

他県にも同様の組織が設置されつつありますが、知事直轄の独立した組織として設置されているのは三重だけなのではないでしょうか。DXのスピードを上げることが地域間競争だとするなら、リモートではなく膝をつき合わせて理解を得る活動が必要。50人の職員を配置していることにも本気度を感じました。他の部局から気軽に相談してもらえる組織でありたいと思っています。

―「あったかいDX」とは。

一人一人に「あったかいDX」とは何かを考えてもらいたいと思いますが、枕詞をつけるなら「みんなの思いを実現する」ということです。DXは難しいものではありません。いわゆる時間の短縮です。それによって何かに挑戦できたり、いろんなことができるようになります。人は面倒くさいことを敬遠しますよね。それを解消するのがDXです。業務の効率や生産性を上げることばかりでは、やる気になりません。組織や企業、自治体のためではなく、一人一人のためにDXを進めたいです。

―CDO自身が考えるDXとは。

新しいパソコンやスマホを導入して業務時間にどれだけ仕事を詰め込めるか、という考え方って、個人の幸せのために設計されていないですよね。そういう意味で、今は社会的な意識を大転換する時期だと思っています。鈴木英敬知事も掲げているように幸福実感度を上げ、住みたい場所で住み続けられる地域づくりが大切です。不便だった過疎地を豊かに暮らせる自然が素晴らしい地域というイメージに転換したいです。

―DXを進めるに当たっての課題は。

デジタルツールそのものの課題よりもルールや規範に関する課題の方が多いんだと感じています。考えてみれば、ITの技術はここ20年ぐらいでもどんどん進化して一部の層には根付いているんです。スマホも10年以上前からありますよね。問題は、それを社会全体が活用しきれていないということです。テレワークやオンライン会議もいつでもできたんですよね。

―まずCDOとして取り組むことは。

ビジョンの策定に向けた準備を進めます。それに当たり、県民の皆さまからアイデアや意見を受け付ける「アイデアボックス」のような仕組みも作ります。県民の皆さまと一緒にビジョンを策定していけるような取り組みを打ち出したいです。新型コロナに関連する情報発信も改善していきたいですね。

―県民にメッセージをお願いします。

デジタルだけにとらわれず、まずは日頃面倒くさいと感じていることを教えてください。その解決に取り組んでいきます。県民の皆さんに参画してもらいたいというより、主体的にDXを進めてもらえる雰囲気づくりに取り組みます。

 

田中淳一氏(44) 最高デジタル責任者(CDO)兼デジタル社会推進局長
【略歴】東京都出身。ユーグレナ取締役などを経て、地方創生のコンサルを手がける社団法人「ローカルソリューションズ」を設立。内閣府の地域活性化伝道師や総務省の地域情報化アドバイザーなども務める。