2021年4月4日(日)

▼データに見る深刻さは昨年をはるかに上回るが、桜の開花宣言もどこか遠い世界の出来事に感じたあの頃に比べ、今年は変わらず巡ってきてくれたといとしい気持ちがわき起こる。コロナ慣れか。感情とは不思議なものだ。非科学的と言われようが、それによってストレスが減り、感情的にも身体的にも健康に導くのだから、おろそかにはできない

▼コロナ禍が急拡大した昨年11月、気象庁が四季の変化を動植物で観察する「生物季節観測」を大幅縮小し、動物は全廃、植物も桜開花や紅葉など6種に絞った。暗い気持ちにさせられたが、この1日の実施を前に一転、継続を決めた。第4波の足音が聞こえはするが、桜前線の北上を追いかけるようにヒバリの初鳴き、ツバメ、モンシロチョウ、ホタルの初見が続きニイニイゼミ、アブラゼミの夏がやってくる

▼トンボを探して職員が公園を走り回るなど、動物観測に限界が見えてきたことや、動植物観測が気象庁の目的ではないことが縮小・廃止の理由だった。絶滅危惧種の動向が自然環境の変化を物語るように、動物観測の困難さが地球温暖化など気象の変化を知らせるに違いない

▼専門家や市民から惜しむ声が相次ぎ、日本生態学会らが観測継続を要望した。自然を愛し季節に敏感な日本人の感性は健在ということだろう。撤回した気象庁もまた、季節感の大切さを知ることでは人後に落ちなかったに違いない。今後は環境省生物多様性センターとの協力関係を構築していくという

▼生き物へのまなざしをみんなで守り伝えようという気持ちが表れているようで心地よい。