2021年2月23日(火)

▼「拝啓天皇陛下様」は、不況下でも三度の飯が食え風呂にまで入れる軍隊を天国のようにありがたがるお人よしの物語で、敗戦で軍隊から追い出されることを恐れ、自分だけは残してほしいと金くぎ流で天皇陛下に手紙を書きだし周囲を慌てさせる。「ハイケイ天ノウヘイカサマ…」

▼週刊現代に連載された小説を渥美清主演でおかしくも悲しい軍隊喜劇として映画化された。「首長様にもこの県民市民のジタバタをぜひ味わっていただきたいものです。つらいですよ」というのは、津市大門でカフェバーを経営する店主からの本紙『声』欄に寄せられた投書。題は「コロナ禍で最後の自助努力」

▼開店6年目にコロナに見舞われて県から休業要請を受けた。パートに出て店を維持したが、今年の緊急警戒宣言の対象から津市は漏れ、もはやこれまで―。最後の自助努力と思い直してランチ、テイクアウトメニューを始めたという。「最後の自助努力」の言葉に公助なき現実を込めている気がする

▼県の津庁舎周辺に中華料理店が2軒、廃業した。昨年の緊急事態宣言中は営業自粛し、同8月の県の緊急警戒宣言以降、不規則な営業が続いていた。今年の県の2度目の宣言で引導を渡されたようだ。近くの高級中華店が閉業したのは昨年9月ころだったか。「長年の愛顧に感謝」のあいさつ文が入り口に貼ってあったが、今度の2軒にはない。刀折れ矢尽きた感をいっそう漂わせる

▼「拝啓首長様」と言いたかったのではないか。新年度県予算案はコロナ対策で跳ね上がるというが、深刻さを増す現状の処方箋は見当たらない。