<桑名市政の課題>漁協組合長の恐喝未遂事件 市、業者に謝罪へ

【桑員河川漁協組合長の恐喝未遂事件を巡り、市の責任や今後の対応が問われている桑名市役所】

三重県桑名市内の宅地開発工事を巡り、業者に金と下請け参入を要求したとして、恐喝未遂罪などで公判中の桑員河川漁協組合長、川﨑幸治被告(61)の事件を受け、市の責任が問われている。開発許可権を持つ市が業者に対し、漁協から工事の承諾を得るよう求めたことで、業者は「市から開発許可を得るには漁協に金を払わざるをえない」と考えたからだ。公判では、業者が市に漁協の不当要求を伝えたにもかかわらず、聞き流されたという話も出た。刑事訴訟法上、公務員は犯罪事実の告発義務を課されている。市はこれらの非を認めてこなかったが、判決後、業者に謝罪する方針を、18日までに固めた。

「金を払わないと開発許可が降りないと考えていた」―。9月25日、津地裁四日市支部で開かれた川﨑被告の第3回公判。川﨑被告から現金200万円を要求された開発業者の男性社長が検察側の証人として出廷し、弁護側の反対尋問に答えた。その上で、男性社長は「金を払わなければ組合長が市にクレームをつける。市役所も金が動くことを容認していた。市は組合長のいいなり」と主張した。

起訴状によると、川﨑被告は平成30年11月と昨年4月、東員町の漁協事務所で男性社長や開発申請業者らに対し、工事を承諾する見返りとして協賛金の名目で200万円を要求した上、自身が勤める川﨑建設などを下請け業者に入れるよう強要したとされる。

この日は開発申請会社の社長も検察側の証人として出廷し、30年11月に川﨑被告と面会した後、協賛金の要求について市に伝えたが、担当者に聞き流されたことを証言した。昨年5月、工事現場で起きた不審火のことで市に説明に行った際も協賛金の話を再度担当者に伝えたが、対応は同じ。市は不審火の件で漁協へ説明に行くよう業者に求めたという。

開発申請会社の社長は10月、伊勢新聞の取材に「組合長に会う前から、漁協へ行けば金の話になることを市の担当者に伝えていた」と証言した。過去にも、別の開発工事で県職員から桑員河川漁協へ工事説明に行くよう求められ、金の話になった経験があったという。

社長は取材に対し「桑員地区の開発工事では県や市の指示を受けて漁協へ行き、金を支払うのが当たり前になっていた」と話した。桑名市の担当者は金銭要求の話を伝えたにもかかわらず、漁協から工事の承諾をもらうよう求めたという。

一方、伊藤徳宇市長は7月3日の定例記者会見で事件について市の見解を発表し「市があたかも共犯と言われることは誠に心外」と述べた。市の担当者は業者に漁協へ行くよう指示した事実はないと否定した。

だが9月になり、市職員が「漁協の承諾は?」と手書きした業者宛ての文書の存在が明らかになり、担当課の説明は虚偽だったと判明。伊藤市長は10月上旬、市役所で取材に応じ、定例会見の時点では「文書の存在を知らなかった」と話した。

漁協から工事の承諾を得るよう業者に指示した文書の存在が明らかになった今も、担当課は「市に責任はない」と強調する。一方、伊藤市長は10月下旬、市役所で取材に応じ「非は認めなければいけないと考えている」と明かした。謝罪の方針は固まっており、判決後に発表するという。

担当課と市長の意見が食い違っていることが問題の根深さをうかがわせる。事件を受け、対外的な市の信用という根本的な問題が問われている。市職員の逮捕者が続出した前市政の晩年を思い出し、犯罪とは無縁の行政運営を目指すことが求められている。

◇    ◇

任期満了(12月18日)に伴う市長選が22日告示、29日投開票の日程で実施される。現職と新人の計3人が立候補を表明し、選挙戦になる見込みだ。市長選を前に市の課題を探った。