<まる見えリポート>桑員河川漁協へ協力金 5年間で2億7500万円

【桑員河川漁協が県に提出した業務報告書に記載されている協力金の一覧表。黒塗り部分に企業・団体名が載っている。】

宅地開発業者から現金200万円を脅し取ろうとしたなどとして、組合長が恐喝未遂罪などに問われて公判中の三重県の桑員河川漁協が平成26年8月から昨年7月までの5年間に協力金名目で建設会社などから約2億7500万円を受け取っていたことが県への取材で分かった。他の内水面漁協(川の漁協)と比べ、額が突出している。組合長の川﨑幸治被告(61)は起訴内容を否認し、公判では「無理強いはない」と強調した上で「業者には全て(協力金を)お願いしていた」と述べた。公判では漁協が工事に伴う漁業補償を理由に業者に協力金を要求することの是非が問われている。

県によると、県内には24の内水面漁協があり、過去5年の協力金の総額で同漁協に次いで多かったのは伊賀川漁協の8900万円。宮川漁協の6929万円が3番目に多かった。一方、数100万円の漁協が複数あり、中には協力金を受け取っていない漁協もあった。県の担当者は「組合員数や事業規模の違いがあり、一概に比べられない」と説明する。

桑員河川漁協の協力金は何に使われているのか。漁協が県に毎年提出している業務報告書によると、事業損失の補填(ほてん)に使われているのが分かる。漁協の過去5年の事業損失は3300万円から3800万円で推移。収入に対し、事業支出が多いからだ。

例えば平成30年8月から昨年7月までの事業年度(同漁協は7月が年度末)をみると、釣り人から取る受入入漁料などの事業収入が720万円なのに対し、事業支出は2695万円で差額が赤字になる。さらに、人件費などの事業管理費として1791万円の支出計上があり、事業全体では3766万円の赤字だ。

一方、漁協は同年度、延べ85の企業・団体から3849万円の協力金を事業外収益として受け取った。この協力金が3700万円余りの赤字を打ち消し、経常利益は85万円。この85万円から住民税と事業税が引かれ、66万円が次年度への剰余金となっている。

この毎年出る3千万円から4千万円弱の事業赤字を協力金で補うのが同漁協の運営方式とみられる。川﨑被告は10月に津地裁四日市支部であった公判で、協力金がなければ組合運営が難しい旨を説明。「組合員に協力金の利益分配はしていない」と語った。公共工事の場合、請負金額が2千万円以上の工事を対象に、受注額の0・2%から0・5%相当を協力金として業者に請求していたという。

県によると、同漁協の主な支出はアユやアマゴなどの放流費や河川清掃などを名目にした漁場管理費。過去5年、放流費と漁場管理費にそれぞれ1千万円以上の支出がある。支出入の裏付けは県農林水産部団体検査課が2年に一度検査し、帳簿や領収書、通帳などから業務報告書の内容に間違いがないかを確認しているという。

同漁協の検査経験がある同課の担当者は取材に「検査内容は明かせないルールがあり、放流費や漁場管理費の詳細を言えない」と説明。協力金については「もらうことや金額の多い少ないは検査項目ではない。協力金が少ない漁協は組合員が手弁当で運営しており、協力金の募集は組合の自助努力の話」と語った。

川﨑被告は県発注工事を巡り、建設会社から50万円を脅し取ったとされる恐喝容疑でも逮捕されており、内水面漁協を管轄する同部は県議会から説明を求められている。水産振興課の伊藤徹課長は「捜査権があるわけではないので、受け取った後の金の色までは調べられない」と述べ、協力金が恐喝によって得た金かどうかを判断するのは「警察の仕事」と説明した。

一方、伊藤課長は「判決内容が組合長個人ではなく漁協の責任まで踏み込むようであれば、県も何らかの対応を検討しなければならない」と語った。県発注の工事を巡っては、業者が県警の調べに「県の指示で漁協に工事説明に行き、恐喝された」と供述していることから、県土整備部も再発防止策を検討しており、県は公判の行方を注視している。