特攻隊員「辞世の句」を冊子に 伊勢の岡出さん後世に伝える

【特攻隊員が書き残した辞世の句を手にする岡出さん=伊勢市勢田町で】

【伊勢】太平洋戦争末期、戦地へ赴くことが決まった特攻隊員たちが書き残した「辞世の句」を掲載した冊子「特攻兵士 魂の叫び―特攻兵士と暮らした五歳の私」を、三重県伊勢市勢田町の岡出とよ子さん(80)が発刊した。幼いころの一時期、特攻隊員らと過ごした岡出さんが所持する34句を一冊にまとめた。「当時は幼く、行ってきますと出ていった兵隊さんは帰ってくるものだと思っていた。心の底から吐露した叫びのような辞世の句。こんな思いをする若者が二度と出てはいけない」と語る。

かつて、現在の伊勢市に、陸軍戦闘飛行隊の総本山といわれた明野陸軍飛行学校があり、岡出さんの両親は、昭和18年から20年の終戦まで、市内で特攻隊員の宿「攻空寮(せくうりょう)」を切り盛りしていた。岡出さんはその寮で3―5歳まで暮らした。「兵隊さんは優しく、よく遊んでくれた。寮を出発する朝、私を抱き上げ、ぐっと抱きしめたくれた感覚が忘れられない」という。

特攻隊員たちの句は、戦後、岡出さんが中学生の時、母親のタンスから見つけた。岡出さんの両親に残していった句だった。「思い出を 寮に残して 空を征く」「大東亜海の 花と散らん」―などと短冊にしたためられている。句は遺族の元へ届けようと試みたが、遺族捜しは困難で、断念したという。

岡出さんは昨年、長年所持してきた句を縁あって沖縄県にある神社に奉納することを決め、奉納前に冊子にまとめて残すことにした。冊子には、34の短冊と自身の戦中、戦後の体験記などを掲載している。

岡出さんは「後世に伝えたい一心で、自分の中にあるすべてを冊子に込めた。特攻兵たちの痛みを知ってほしい。そして平和な日本、平和な世界を築いていってほしい」と話している。

冊子はA4判36ページで2千部を発刊し、市立図書館2カ所や学校などに寄贈する予定。また、市立伊勢図書館(同市八日市場町)では、11月1―8日まで句の短冊34点を展示する。1日午後2時からは、岡出さんが体験を語る講演会もある。