「心の荷、下して」 御浜町「尾呂志庵」 体験型民宿、住民憩いの場に

【体験型民宿「尾呂志庵」を運営する松井岱さん=御浜町上野で】

【南牟婁郡】東京都出身の松井岱(やす)さん(73)が、三重県御浜町上野で体験型民宿「尾呂志庵」を開いており、住民らの憩いの場として親しまれている。松井さんは「地域の人がふらっとお茶を飲みに来てくれる。のどかな自然の中でゆったりとした気持ちになってほしい」とほほえむ。

尾呂志庵は、御浜町の山間部の尾呂志地区にある。同町と熊野市の境にある熊野古道・風伝峠から吹き下ろす巨大な朝霧「風伝おろし」が見られる自然豊かな場所だ。同地区では、山から湧き出る水に恵まれ、コメ栽培に適しており、日本酒「颪(おろし)」に使う酒米も栽培されている。

スギやヒノキをふんだんに使った築13年の一軒家。訪れた人は、松井さんが栽培している野菜で食事を作り、室内にあるいろりで魚を焼いて食べることができる。野草茶やみそ作り体験のほか、かまどでご飯を炊いたり、五右衛門風呂に入ったりすることもできる。

50代の頃から「自然が豊かな場所で暮らしたい」と考えていた。昔から「思い立ったらすぐに行動に移す性格」。56歳で車の運転免許を取得し、車で九州一周旅行をしたこともある。東京で和歌山県新宮市に住む人と知り合い、熊野地方を何度も訪れるうちに移住を決意。60歳の時に東京を離れ、同県田辺市本宮町と那智勝浦町で計約11年暮らした。

平成23年9月の紀伊半島豪雨の影響で田辺市本宮町から那智勝浦町に引っ越したが、自宅の車庫などが水に漬かる被害を受けた。このため知人が住む熊野市や御浜町で新たに自宅を探していたところ、同町の「移住・交流サポートデスク」から尾呂志庵を紹介してもらった。

「人が集う場所にしたい」と、昨年7月にオープンしてから県内外からさまざまな人が尾呂志庵を訪れる。これまで元劇団四季のバリトン歌手の演奏会や歴史研究家の講演会などを開催。ヨガや、紙のストローで模型を作る体験教室なども開いている。

松井さんは「たくさんのご縁で体験型民宿を開くことになった。私の財産は人。人が集い、心の重荷を下ろせる場所にしていきたい」と話す。

問い合わせは松井さん=電話090(5414)2079=へ。