「漁協の承諾」を得るよう指導 桑名市が工事業者に 組合長の恐喝未遂事件

【桑名市職員が宅地開発に伴う行政指導として、業者に対し、桑員河川漁協から工事の承諾を得るよう求めた文書の写し】

三重県桑名市内の宅地開発工事を巡る桑員河川漁協組合長、川﨑幸治被告(61)の恐喝未遂事件は市が業者に対し、工事について「漁協の承諾」を得るよう行政指導し、起きたことが11日までに、市への公文書開示請求で判明した。川﨑被告が組合長の立場を悪用し、業者に金を要求する一方、市が業者に漁協から「工事の承諾」を得るよう指導し、事件が成立したことが明らかになり、開発を許可する市都市整備課の高栁貴久蔵課長は指導の結果、事件が起きたことを認めた。

起訴状などによると、川﨑被告は平成30年11月―31年4月、東員町の漁協事務所で、四日市市の不動産会社社長らに対し「言うことを聞かんと現場の工事が止まるぞ」などと脅し、現金200万円を要求。さらに、母親が経営する川﨑建設などを下請け業者として使うよう強要したが、同社はいずれの要求にも応じなかったとされる。

開示された公文書は、宅地開発に伴って業者が作る調整池について、同課と業者の間で交わされた協議メモや業者が開発申請を行う前に、両者で申請内容を確認するチェックシートなど。このメモに「漁協との協議が必要」と記され、シートには市職員の手書きで「漁協の承諾は?」と記載されていた。

都市計画法では行政が民間の開発工事を許可する際、漁業団体の同意は必要ない。高栁課長はこれまで「漁協の同意は開発許可の条件ではない」と説明していた。一方「漁協の承諾は?」の文言について高栁課長は「表現としては誤解を招くものだが問題があったとは考えていない」と主張する。

市の指導を受け、業者は川﨑被告のいる東員町の漁協事務所へ出向いた。市は指導に基づく漁協との協議録を提出するよう業者に求めており、今回の恐喝未遂事件で業者が提出した協議録の日付は、業者側が川﨑被告に脅され、金や下請参入の要求を受けたとされる30年11月1日だった。

高栁課長は行政指導を行う根拠として24年に県議会で採択された「河川上流域における採石、開発事業等について」の請願を挙げた。請願に基づき、県が業者に漁業団体との事前協議と合意形成に努めるよう指導し始めたため、市も25年3月以降は県の方針に倣ったという。

ただ、県は指導対象の漁業団体について「漁業権を有する」としている。今回、恐喝未遂事件が起きた同市蓮花寺を流れる蓮花寺川は、県によると、桑員河川漁協の漁業権が及ばない河川。高栁課長は濁水の二次放流先が漁協の漁業権が及ぶ員弁川なので指導に問題はないとするが、県は二次放流先の河川を指導対象に含んでいない。そのため、高栁課長は「指導のあり方を検討したい」としている。

高栁課長は行政指導が恐喝未遂事件につながったことを認める一方「悪いのは組合長であり、市に責任は一切ない」と主張する。指導は今回の事案を含めて計10件行ったが、他の開発業者が恐喝被害に遭っていないかを市として調べる考えはないという。

さらに、高栁課長は「行政指導に強制力はない。仮に漁協と協議しなくても開発許可は下りる」とし、今後も業者に対し、同様の指導を行う方針を強調する。一方、過去の事案も含めて市の指導によって恐喝に遭った被害相談が今後も寄せられれば、請願に基づく指導を見直す考えも示した。

ある建設業関係者は「恐喝を行う者が悪いのは当然だが、恐喝行為を後押しする役所も同じくらい悪い。非を認めて潔く謝らなければ根本的な解決にはならない」と指摘している。