36人水難事故の記録まとめる 津・大川学園理事長が書籍出版 三重

【「語り伝えたい話 1955の夏」を紹介する大川氏=津市大谷町の大川学園で】

【津】三重県津市大谷町の学校法人大川学園理事長の大川吉崇氏(79)が、昭和30年に津市の海岸で中学生36人が命を落とした水難事故についてまとめた書籍「語り伝えたい話 1955の夏」を、事故から65年の命日の28日に伊勢新聞社から出版する。

当時同中の生徒だった大川氏は事故が忘れ去られることを憂い「歴史の積み重ねが今になり未来がある。子どもたちに命の大切さや自然への畏敬を教える生きた教材として現役の先生に届けたい」と話す。

同事故では、中河原海岸で水泳の授業中だった津市立橋北中の女子生徒36人が強い潮流に流され溺死した。事故を巡り当時の校長ら3人が業務上過失致死罪で起訴され一審は執行猶予付禁錮刑、控訴審で無罪となった。

大川氏は当時2年生。平成16年に同級生有志で立ち上げた50回忌法要の事務局を務め、準備の中で関連資料を探した。事故の大きさに比べ残された資料が少なかったため、その後に自ら収集した記録や文書に自身の所見を加え一冊にまとめた。

著書では、50回忌に至るまでと当日の記録▽事故を取材し50回忌にも参列した元新聞記者野場豊氏の講演録と写真▽事故翌日からこれまでの伊勢新聞などの記事の抜粋▽同級生の思い▽追悼の曲「はまかぜに」の作曲者に関する文書▽当時の津市長による回想▽県教組役員だった元教員が50回忌の翌年に日本教育法学会で発表した報告文書―などを7章にまとめた。

大川氏は一連の活動の中で感じた疑問として「三重県の教育組織としては今に至っても意識的に忘れようとしているのか、無視されている傾向がある」と指摘。事故後水泳教育のあり方が問われ全国の学校にプールが整備されたことを例に「負の遺産であっても必ず正の遺産を生む」とし「当局にとって負であれ正であれ公文書として公共事業体に残さないと地域の歴史や文化、本気の子弟教育は消えてしまう」と強調する。

「地域を知ることで郷土愛が生まれ、生きる力も出てくる。地元の人にこの地で起こった水難事故を知ってもらい、歴史を生かし生き方を考える一つにしてほしい」と話している。四六判246ページで500部出版。1冊税別1200円。問い合わせは伊勢新聞社=電話059(224)0003=へ。