5人死傷事故、懲役7年 被告の危険運転認めず 津地裁判決

平成30年12月末、三重県津市の国道23号で乗用車とタクシーが衝突し、乗客ら4人が死亡、1人が重傷を負った事故で、乗用車を運転し、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた津市白山町二本木、元会社社長末廣雅洋被告(58)の裁判員裁判の判決公判が16日、津地裁であり、柴田誠裁判長は同罪の成立を認定せず、より量刑が軽い過失運転致死傷罪を適用し、懲役7年を言い渡した。

検察側は予備的訴因として起訴罪名に同罪を加えており、津地裁は同罪を適用した。検察側は論告公判で危険運転致死傷罪では懲役15年、過失運転致死傷罪では懲役7年を求刑。弁護側は過失運転致死傷罪を主張し、懲役3年6月、執行猶予5年を求めていた。

判決理由で柴田裁判長は末廣被告が制限速度時速60キロの一般道で、乗用車を146キロで運転していたことを認定。「異常な高速度で制御困難だったことは明らか」としつつ、自車が高速度で走行中にタクシーが道路を横断する状況を具体的に想定することは困難とし、過失運転致死傷罪を適用したと説明した。

一方、過失運転致死傷罪の量刑理由については「誰しもが犯しがちな一瞬の気の緩みによる不注意の範囲を大幅にはみ出し、殊更な無謀運転として故意犯に準ずる」と批判。タクシーの過失を否定し「事故は専ら被告人の異常な運転に起因する」と述べた。

裁判を傍聴した遺族は判決後の報道陣の取材に「判断理由が分からず、ばからしい判決で受け止められない」と怒りをあらわにした。津地検の吉野太人次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。

判決によると、末廣被告は平成30年12月29日夜、同市本町の国道23号で、時速約146キロで乗用車を走行中、中央分離帯の開口部を右折しようとし、道路を横断していたタクシーの側面に衝突。運転手の野村達城さん=当時(44)=、いずれも乗客の永田誠紀さん=同(58)=、横井大和さん=同(37)、大西朗さん=同(31)=の四人を死亡させ、萩野将志さん(30)に胸部大動脈損傷や骨盤骨折などの重傷を負わせた。

 

■常識とかけ離れ ふに落ちない解釈■
常識や遺族の思いとかけ離れた判決が下された。一般道で乗用車を時速146キロで走らせ、4人を死亡、1人に重傷を負わせた末廣雅洋被告(58)の裁判員裁判。津地裁は「常軌を逸した速度で故意犯に準ずる」と批判する一方、法律解釈としては危険運転致死傷罪の成立を認めず、同罪を適用する基準の高さが浮き彫りになった。

事故現場となった国道23号は路外に飲食店などの施設や脇道がある場所。検察側はそんな場所で146キロの速さで走行すれば、事故の危険性が高まることを指摘した。末廣被告が過去に今回と同じ中央分離帯の開口部付近で事故を経験し、道路を横断する車両がいることを予測できたと主張していた。

だが、柴田誠裁判長は「路外施設から道路に進入する車両の存在に殊更注意を払いながら運転する者はまずいない」と一蹴。過去の事故については「5年以上前のもの。この事故歴から開口部を通過する車両の存在を思い浮かべられるはずがない」と述べた。

車を運転しながら前方の脇から何かが飛び出すことを予想せずに走る人は「まずいない」と言い切れるのか疑問が残る。事故歴についても考慮せず、ふに落ちない解釈だった。

判決後、裁判員には報道陣の求めた会見に応じてもらえなかった。公判では柴田裁判長が法律論の解釈を約30分間、延々と説明。法律論の解釈だけなら裁判員裁判で審理した意味があったのか。146キロで一般道を暴走し、5人が死傷する大事故でも、法律解釈次第では「過失」になる。だからこそ、公判で家族を失った遺族や、今も後遺症に苦しむ被害者の思いを聞いた裁判員には、判決を導く上で悩んだ点を聞きたかった。