被告「正確な速度分からない」 津の4人死亡事故 危険運転致死傷罪を否認 三重

三重県津市の国道23号で平成30年12月末、乗用車とタクシーが衝突し、4人が死亡、一人が重傷を負った事故で、乗用車を運転し、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた同市白山町二本木、元会社社長末廣雅洋被告(57)の裁判員裁判の初公判が2日、津地裁(柴田誠裁判長)で開かれた。末廣被告は罪状認否で「法定速度を上回った速度で走り、事故を起こしたことは認めるが、正確な速度は分からない。車の進行を制御できなかったとは認識していない」と起訴内容を否認。弁護側は過失運転致死傷罪にとどまると主張した。

争点は危険運転致死傷罪の成否となる。検察側は同罪が認定されなかった場合に備え、予備的訴因として過失運転致死傷罪を追加している。

検察側の冒頭陳述によると、現場は片側3車線の直線道路。タクシーは国道沿いの飲食店駐車場を出て中央分離帯の開口部を右折するため、駐車場から開口部までの3車線を横切る最中だったとされる。末廣被告の乗用車は高速度の走行で制御を失い、タクシーの側面に衝突したという。

弁護側は冒頭陳述で、タクシーが開口部を右折しようとしたことについて「中央分離帯を通るより安全な道はある」と指摘。検察側が主張する約146キロという末廣被告の走行速度については「メーターを見ていなかったので146キロという認識はなかった」と述べた。

起訴状によると、末廣被告は平成30年12月29日午後9時53分ごろ、同市本町の国道23号で、時速約146キロで乗用車を走らせ、タクシーの側面に衝突。運転手の野村達城さん=当時(44)=、いずれも乗客の永田誠紀さん=同(58)=、横井大和さん=同(37)、大西朗さん=同(31)=の4人を死亡させ、萩野将志さん(30)に胸部大動脈損傷や骨盤骨折などの重傷を負わせたとしている。
■事故8回 検察側、危険性指摘■
乗用車でタクシーに衝突し、5人を死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた末廣雅洋被告(57)の裁判員裁判。検察側は2日の初公判で末廣被告が過去に8回の事故を起こしていたことを示し、直近の2回は今回起訴された事件と同じ中央分離帯の開口部付近で起きた事故だと強調、運転の危険性を指摘した。

検察側によると、末廣被告は平成24年ごろ、国道23号の中央分離帯開口部から反対車線に方向転換しようとする車両の左側を抜けようとし、自車を衝突させたとしている。25年3月6日の夜には、国道165号で、左前方から中央分離帯開口部まで横断しようとした車両を避けて急停止した際、後方車両から追突されたという。

一方、この日の公判で、検察側は末廣被告の乗用車に搭載されていたドライブレコーダーの映像を公開。事故直前、加速しながら次々と自動車を追い越す様子が映し出された。約8秒間で時速約56キロから129キロまで加速し、その後も加速を続けて事故を起こしたとされる。
■「運転させてはいけない人」 遺族、怒りをあらわ■
「あれだけ事故を繰り返しながら危険運転を認めないなどもってのほか」。自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた末廣雅洋被告(57)の初公判を傍聴した遺族は、同罪を否認した被告に対し、公判後の取材で怒りをあらわにした。

喪服姿で法廷に臨んだ大西朗さん=当時(31)=の母・まゆみさん(60)は、末廣被告が過去に8回事故を起こしていたことをこの日の公判で知った。「運転させてはいけない人。反省していない」と非難した。法廷で被告の様子を見ていたが、うつむいて目を合わせようとしなかったという。

「あの国道で146キロも出せばどうなるか。誰が考えても分かる。裁判所には難しい法律論ではなく常識で判断し、危険運転を認めてほしい」と話したのは朗さんの婚約者牛場里奈さん(34)。事故がなければ既に式を挙げていたといい「事故で私の人生も一変した」と語った。

まゆみさんたちはこの日の公判で朗さんの遺影を持ち込んだが、地裁は許可しなかった。地裁は取材に「個別事案の判断理由は答えられない」とした上で、公平な裁判の運営や被害者への心情の配慮などを総合的に考慮したとしている。

まゆみさんは「とても残念で悲しい。息子の元気だった頃の様子を見て、被告に自分のやったことの重みを受け止めてほしかった。罪の重みを分からせるためにも遺影の持ち込みは必要ではないか」と語った。