県内緊急宣言解除 「日々、厳しい決断だった」 伊勢で飲食店経営の上田さん 三重

【店前で弁当販売を行う上田さんら=伊勢市のあじへい明野店で】

新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う県への緊急事態宣言が14日、解除され、三重県内では休業や時短営業が余儀なくされていた飲食店などが平常営業に戻りつつある。宣言から約1カ月間、苦悩しつつ活路を見いだそうと奮闘している経営者の1人が伊勢市で飲食店三店舗を経営する上田澄人さん(43)。上田さんは「日々、厳しい決断を迫られた」と振り返る。

先月18日、上田さんは県からの要請を待たずに、鍋料理店「旨家どんぐり」を自主休業した。隣町の明和町で感染者が確認され、店内への来客が一気に減少してきた時期。他県では飲食店がクラスターとなった事例もあった。「コロナの早期収束との希望的観測では先は見通せない。最悪の事態もありうると行動した」とする。とはいえ、売り上げ消滅が明白な中での“苦渋の決断”だった。

残る2店舗は中華レストラン「あじへい明野店」とテイクアウト専門のたい焼き店「わらしべあけの店」。県内で感染が拡大した時期でもあり、「後手に回ってはいけない。スピーディーな判断が求められる」と感じ、中華レストランも要請前に時短営業に切り替えた。同時に店内の売り上げ減少を補うため、いち早くテイクアウトとデリバリーに注力することを決めた。

店内だけでなく、往来にアピールしようと店の前にテントを張り弁当を販売し始めた。が、当初は思うように売れず、厳しい状況が続く。店の売り上げが6割減となった日もあった。24日には伊勢市内で感染者が出て、「気持ちががくっとなった」と上田さん。

それでもメニューに工夫を凝らすなど試行錯誤を繰り返す中で、テイクアウトの売れ行きが徐々に伸び出す。全体の1割程度だった売り上げが5割以上となり、ゴールデンウイーク期間中には8割弱まで占める日もあった。「大変だけど頑張ってな」と声をかけてもらうことも多くなり、「地域の温かさを感じた」とする。

とはいえ、店舗全体の売り上げは前年比8割程度。14日に県の緊急事態宣言が解除され、休業要請は全面解除となった。しかし、すぐさま元の状態に戻ることは難しく、今後は“アフターコロナ”の経営判断が要になると考える。

弁当の継続販売の有無もその一つ。通常、弁当は手間がかかる上、単価が安く、衛生上のリスクもあるとされる。しかし、夏場対策をしっかり取りながら、販売を続けることを決めた。

上田さんは思いをこう語る。「弁当を応援してくれた人も多い。元に戻りそうなので弁当辞めます、そして次の感染の波がきたのでまた始めました、では企業姿勢としてダサすぎる」。鍋料理店も再開する予定だが、アフターコロナの流れに沿って取り組む考えだ。

上田さんが経営者として決断を迫られる中で、商工会や地域の仲間との連携に加え、積極的に活用したのが会員交流サイトの一つ、オンラインサロン。外出自粛で対面で会合を持つことが難しい中、ネット上で情報収集や共有が出来るのは有意義だとする。

上田さんはそこに自身の思いを日記形式で投稿している。苦悩や葛藤を記録することで、自身を客観視することもできたという。

上田さんは「百年に一度とも言われる、日本や地域の危機に直面し、日々決断が求められた」と厳しい日常を振り返る。一方で、「一日も早く日常を戻したいという気持ちはあるが、焦らず、地域の助け合いを大切にしながら取り組んでいきたい」とも話し、コロナ後の世界を見据えながら歩みを進める。