鳥羽市 三島由紀夫の書簡を図録化 「潮騒」の舞台、3度訪問 三重

【三島と神島住民との交流を示す書簡を初収録した図録を紹介する豊田さん=鳥羽市役所で】

【鳥羽】三重県鳥羽市は、作家三島由紀夫(1925―1970)が小説「潮騒」執筆のために訪れた同市の離島・神島の住民との交流を示す書簡12点や写真を収録した図録「三島由紀夫と神島―『潮騒』をめぐる人々」を作成した。書簡は一昨年の夏に山梨県の三島由紀夫文学館で開かれた企画展で期間限定で公開されたが、刊行物での収録は初という。

潮騒は神島をモデルとした「歌島」が舞台の長篇純愛小説。三島は同作執筆への取材と、同作を原作とした映画撮影の見学のため、昭和28年3月上旬と8月末から9月初旬、翌29年8月上旬の計3回にわたって神島を訪問した。

書簡は、当時神島灯台所長をしていた山下四郎氏に宛てて送られた3通と、同元職員の鈴木通夫氏に宛てて送られた9通。「蚤(のみ)まで運搬致しまして、申し訳ありません」など滞在時の思い出や取材協力への感謝を冗談も交えながら記しているほか、山下夫妻と長女、鈴木氏を作中の登場人物や後の戯曲「船の挨拶」のモデルとして採用したことも示唆している。

これらの書簡は平成30年に発見され、山梨県山中湖村の三島由紀夫文学館で同年5―10月に開催された企画展「潮騒の人々」で初公開された。チラシで知った同市教委文化財専門員の豊田祥三さん(44)が、鳥羽市内での周知を図ろうと図録の作成を企画した。

図録はB5判全55ページで500部を作成。書簡のほか、三島と島民の写真8点も初収録した。一般頒布はせず、全国主要図書館や大学図書館、鳥羽市立図書館をはじめ県内図書館に配布するほか、約140人が住む神島町に全戸配布する。

豊田さんは「潮騒の島として後世に語り継いでいくための基本文献ができた」と話している。