「実名報道に制約」 災害時の個人情報、三重県が指針 記者クラブ意向で運用延期に

【三重県が適用の延期を決めた個人情報の公表基準】

鈴木英敬三重県知事は20日の定例記者会見で、災害時の行方不明者や死者などの公表指針を発表した。家族の同意を条件とするなど、公表に制約を設けている。これに対し、報道各社でつくる県政記者クラブが「容認しがたい」との意向を伝えたところ、県は「今後の協議を踏まえて検討する」とし、指針の運用開始を延期することを決めた。

指針は「行方不明者や安否不明者の氏名などを公表することで円滑な救助が可能になる」「死者の氏名を公表することで被災地の混乱を防ぐことができる」などと、個人情報を公表する意義を唱えている。

一方で「個人情報の保護に留意する必要がある」とし、家族の同意を得ていることを公表の要件に設定した。行方不明者や安否不明者は家族の同意に加えて「円滑な救助や救急につながる場合」に限った。

大規模災害の発生時に同意の確認作業が困難な場合は、災害対策本部長を務める知事が判断すると規定。家庭内暴力や児童虐待を受けて住民基本台帳に閲覧制限がある場合は公表しないことも定めている。

県はこれまで、災害による死者や行方不明者の氏名について「個人情報に当たる」として公表していなかった。災害によって死者が発生したことを公表する場合も、性別や市町別の住所などに限っていた。

一方、県は平成31年から、災害時の個人情報の公表について統一的な基準を設けるよう国に提言してきた。「策定に向けた動きがみられない」(防災対策部)ことから、独自での策定を決めたという。

鈴木知事は会見で「個人情報の公表は条例に基づいて原則として禁止してきたが、公表しなかったことで救助に結びつかないケースがあった。円滑な救助のため、氏名の公表基準を明確にした」と述べた。

これに対し、県政記者クラブの幹事社は「クラブの総意」として「被災の具体的な状況を巡る報道活動を困難にし、県民の防災意識を低下させる」とし、指針の撤回を申し入れる意向を鈴木知事に伝えた。

鈴木知事は「非公表の可能性が高いところを少しでも公表するための道筋」と理解を求める一方で「クラブと協議したい」と説明。県は会見後、21日に予定していた指針の適用を延期すると通知した。

同様の公表基準は、群馬など少なくとも五県が発表している。全国の新聞社でつくる日本新聞協会は19日の理事会で「実名公表」を求める要望書を都道府県知事や防災担当相らに提出することを決めた。