<検証・三重県予算>防災で進むデジタル化 避難路、パソコンで手軽に

【今は紙媒体の「Myまっぷラン」】

三重県が目指すのは、最先端技術を活用した超スマート社会「ソサエティー5.0」の実現。新年度は防災分野でもデジタル技術の導入が著しく、避難経路を作成するシステムの開発やAI(人工知能)スピーカーによる避難誘導など事業がめじろ押しだ。

その一つが「Myまっぷラン+(プラス)」だ。自宅から避難所までの経路をパソコンで手軽に作れるようにするため、システム開発費などに約780万円を計上している。三重大の川口淳准教授が提唱する手法で、すでにある紙媒体をデジタル版に変える。

紙媒体との最も大きな違いは、デジタルマップにハザードマップを落とし込んでいる点。紙媒体のMyまっぷランは、実際の浸水被害や土砂災害のリスクが分かりにくかった。デジタル版は自然災害のリスクを示しながらより安全な避難経路を作成できるという。

災害の起こっていない平時に個人がホームページにアクセスし、自らの避難経路を作ることを想定。防災企画・地域支援課の担当者は「自宅周辺のハザードマップを知らない人が多いので、システムを使って自然災害のリスクを知ってもらいたい」と話す。

ただ、いくら手軽でも平時に避難経路を調べる人はどれくらいいるのか。県はホームページなどで災害情報を発信しているが、平時からの閲覧は少なく、身の危険が迫る災害時に集中する。平時に県民に主体的に防災に取り組んでもらう活路は見いだせていない。

一方、ソサエティー5.0の目玉となる事業ではAIスピーカーを活用。無料通話アプリ「LINE(ライン)」と組み合わせ、高齢世帯に避難を促す。災害発生時、高齢者に遠隔地の家族が避難を呼び掛け、高齢者にAIスピーカーで避難情報を取得してもらう。

昨年9月に伊勢市で開かれた防災訓練で国内で初めて導入。災害対策課の担当者は「家族の声で避難を呼び掛けるほうが避難誘導に効果的」と説明する。新年度は300世帯に1年半ほどAIスピーカーを貸し付けるため、約1400万円を計上している。

デジタル技術の導入が進む中で課題となるのは、不測の事態への対応だ。デジタル技術を活用する事業はシステム開発会社や情報通信会社に一部を委託する場合が多い。災害で刻一刻を争う時に不測の事態が起こっても、県職員だけでは対処できないことも。

実際、昨年10月に県南部で大雨が降る中、災害情報を発信する県のホームページ「防災みえ.jp」が閲覧できない状態になった。11月には「防災みえ.jpメール配信サービス」が配信ができなくなった。いずれもシステムを委託している会社が対応した。

デジタル化が進めば、電気への依存度も高まる。昨年の千葉県のように広域停電が発生すると、電気の使用が難しい。平時は私たちの暮らしを快適にする可能性を秘めるが、防災分野の主戦場は非常時。超スマート社会における防災の道のりは険しそうだ。