<検証・三重県予算>観光振興 デジタルで稼ぐ力を 「話題の動画」実は広告

【県が公開する観光プロモーション動画】

三重県の魅力をアピールし、誘客に努める観光局が、令和2年度から前面に打ち出すのが「デジタルマーケティング」。情報発信だけでなく、顧客の評価などの情報収集にもインターネットを活用する考え方だ。

スマートフォンやタブレット端末を使い、あらゆる情報を入手し、発信できる時代。観光局の担当者は「観光の分野でもデジタルは欠かせないツールだ。デジタルで観光の稼ぐ力を引き出したい」と説く。

令和2年度当初予算案に8700万円の関連費を計上。主に海外からの観光客向けにインターネット上での情報発信を強化し、寄せられた声を施策に反映して「三重のブランド力を向上させる」という。

これに先立ち、県は先月から海外向けのプロモーション動画を公開した。忍者や海女といった県を代表する観光資源をはじめ、リアス海岸をドローンで上空から撮影。8Kの高画質映像にまとめた。

動画―。この言葉を聞くと、庁内は身構える。県が平成27年に制作した移住促進のプロモーション動画「つづきは三重で」の再生回数が思うように伸びなかった「痛い過去」(県職員)があるからだ。

一方、今回の再生回数は「心配ご無用」と言わんばかりの急上昇。動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開した先月22日から2週間で600万回を超え、15日現在では679万回再生となっている。

県幹部や担当者らは随所で「話題の動画」とアピールし、県の公式フェイスブックに「なんと約680万回も再生されました」と掲載。報道向けの発表もあり、一部メディアでも紹介された。

ところが、動画の閲覧者から賛同を示す「いいね」が押された回数は約1200件。いわゆる「人気動画」に比べると、圧倒的に少ない。動画に寄せられたコメントも、わずか50件にとどまっている。

取材を進めると、この動画はユーチューブで自動的に表示される有料広告として配信されていたことが分かった。県はタイやベトナムなど12カ国の閲覧者を対象とした広告配信に1000万円を投じていた。

広告配信の回数が再生回数の大半を占めるとみられるが、動画を発表した当初の取材に対し、観光局は広告配信をすると説明しなかった。県のフェイスブックなどにも広告配信に関する記述は見当たらない。

実は、同じテイストで観光地を撮影した自治体の動画がユーチューブに山ほど登場する。それらを「わずか1週間で800万回」「2週間で550万回」などとアピールする文言もネット上にあふれている。

観光局の使命は観光振興だが、説明責任を負う公務員であることを忘れていないか。当初は広告配信の存在を明かさなかった理由について、担当者は説明した。「それを言ったらメディアが取り上げないでしょ」