歌会始の儀「夢見心地」 入選した四日市の森紀子さん 三重

「短歌を通して自分史をつづっていきたい」と話す森さん=四日市市水沢町で

「茶刈機のエンジン音は響かひて彼方に望む春の伊勢湾」―生まれ育ったかぶせ茶の産地水沢町の風景を詠んで応募した短歌が入選した。1月16日に皇居・宮殿で催された令和初の「新年歌会始の儀」に、国内外から寄せられた約1万6千首の中から選ばれた作者10人の短歌の一つとして披露された。

「『良い歌をありがとう』という陛下のお言葉がうれしくて、思わず『美しい茶畑の風景を詠みました。ぜひ一度お越しください』とお返ししました」。温かく包み込むような慈愛に満ちた両陛下と言葉を交わせた幸せに、現実のことなのかしらと夢見心地だったという。

「歌会始」への応募は10年ほど前から始めた。4月から5月にかけて若葉が芽吹く一面の茶畑から、陽光を受けて黄金の帯のように輝く伊勢湾を一望する風景を、今年のお題「望」に沿って詠んだ。宮内庁からの入選内定が届き、正式発表後は祝福の電話やメディアの取材依頼が殺到し、反響の大きさに驚いた。

茶農家に生まれ、幼少時から読書が好きで新聞にも毎日目を通していた。読者投稿欄の短歌に興味を持ち、見よう見まねで詠むようになり、19歳の時に初投稿した短歌が佳作に選ばれた。それをきっかけにせっせと投稿を続け、21歳で歌壇賞を受賞した。最年少受賞ということで取材を受け、新聞紙面に大きく掲載された記事は今も大切に残している。

以来、結婚、子育てなどで中断した時期もあったが、家事や農作業の合間に浮かんだ歌を就寝前に書き留めておくなど、短歌への情熱は消えなかった。「茶業に携わる町内外の方々をはじめ、親戚や友人、家族が喜んでくれたことが何よりうれしかった。今後も、これまで通り身近な事柄を題材に、短歌を通して自分史をつづっていきたい」と語った。