自宅放火「伯父への怒り」 定職就かず、将来悲観 津地裁 三重

自殺を図って住宅密集地にある自宅を燃やし、隣接する店舗兼住宅など二棟を延焼させたとして、現住建造物等放火の罪に問われた住所不定、無職喜多俊文被告(57)の裁判員裁判が15日、三重県の津地裁(田中伸一裁判長)であり、被告人質問が行われた。喜多被告は延焼の危険性について「考える精神的余裕がなかった」と述べる一方、放火の動機については「両親に(長年)煮え湯を飲ませた伯父への怒り。家は伯父が少年時代を過ごし、父を苦しめた喜多家の象徴。自分が死ぬだけでなく、残してはいけないと考えた」と述べた。

公判では喜多被告の自宅と約95センチ離れた店舗兼住宅や、空き店舗への延焼の危険性を認識していたかが争点となっている。出火原因について、検察側は故意の点火か自宅1階にあったストーブからの引火の可能性を主張している。

喜多被告は自宅にまいたガソリンを「24時間営業のガソリンスタンド(GS)で購入した」と述べた。検察側に深夜、無人の時間帯にGSを訪れた理由を問われると「店員にいろいろ聞かれ、怪しまれると思った」と語った。

喜多被告は捜査段階の調べに対し「ガソリンをまいた時にはリビングのストーブは点いていた」と話していたが、この日の公判ではストーブの点火状態について「記憶にない、分からない」を繰り返した。

喜多被告は高校卒業後、俳優を目指し、名古屋市や東京の劇団に所属したが、30代の初め頃には夢を諦め、四日市市の実家へ戻った。その後は定職やアルバイトをせず、両親に養われていた。父親が両膝を骨折し、施設に入ると平成29年の春頃からは生活保護を受給。経済的に困窮し、将来を悲観して自殺を考えたと主張したが、裁判官から働こうと思ったことはないのかを聞かれると、小さな声で「ない」と答えた。

起訴状などによると、喜多被告は昨年2月21日未明、四日市市御薗町一丁目の木造2階建て住宅の1階に、ガソリンをまいて何らかの方法で引火させ、自宅と隣接する木造2階建空き店舗を全焼、鉄骨3階建ての写真館兼住宅の一部を焼損させたとされる。写真館兼住宅には4人が暮らしていたが、逃げて無事だった。