<みえの事件簿・下>津市香良洲歴史資料館の盗難事件 管理体制の課題浮き彫り

【髙倉被告が津市香良洲歴史資料館から盗んだ軍服など=四日市南署で(11月18日撮影)】

三重海軍航空隊(予科練)の装備品などを展示している津市香良洲町の市香良洲歴史資料館で11月、展示品などが盗まれた事件で、四日市南署は同月17日、窃盗の疑いで、四日市市曙2丁目、工員髙倉清彦容疑者(48)=窃盗罪で起訴=を逮捕した。髙倉被告は軍装品の収集家。来館者を装って短期間に頻繁に来館していたことから管理体制の課題が浮き彫りとなり、前葉泰幸市長は今月下旬、取材に対し資料館に防犯カメラを設置する意向を示した。

起訴状によると、髙倉被告は11月1日ごろから同月6日ごろまでの間、同資料館で5回にわたり、三重海軍航空隊の飛行服やゴーグルなど68点(時価計約40万3500円相当)を盗んだとされる。

髙倉被告は事件の報道を会員制交流サイト(SNS)で知り、同署に自首した。盗んだ品は県警から資料館に返還されている。

市教育委員会生涯学習課によると、同館は館長が常駐しておらず、臨時職員3人が交代で勤務。臨時職員が同月6日、マネキンに掛けていたゴーグルがなくなっていることに気付いたという。盗まれた品の大半は、無施錠の倉庫に保管されていた。

市教委の担当者は「まさか展示品を盗む人がいるとは思わなかった。来館者に不審な目を向けるわけにもいかず、短期間に頻繁に来てもおかしいとは思わなかった」と話した。事件を受け、倉庫に鍵を付けるなどの対策を講じた。

関係者は資料館の管理体制を危惧している。毎年、慰霊祭に参列している元同海軍航空隊の今井昭司さん(91)=神戸市中央区=は「盗まれた品が返ってきて本当に良かった」と語る一方「盗まれたことにも気付かないとは怒りようもない。せめて防犯カメラは付けてほしい」と話した。

市教委によると、資料館は開館当初、特攻隊員の遺族ら大勢の関係者が訪れたが、昨年は1日あたり平均10人ほど。昭和18年入隊の今井さんには2500人の同期がおり、開館当初は約700人が慰霊祭に参列したが、今年の参列者は今井さんだけだったという。

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三重海軍航空隊は昭和17年8月、一志郡香良洲町(現・津市香良洲町)で発足。終戦までの3年間、主に14歳以上20歳未満の人ら約3万8000人が入隊し、航空機の搭乗員として訓練を受けた。中には特攻隊員として戦死した人もおり、毎年5月には慰霊祭が営まれている。

同資料館は特攻隊員の遺族ら関係者が昭和55年に設立。平成10年、当時の香良洲町に寄贈された。館内には海軍航空隊の関係者や市民が寄贈した遺品などの資料約400点を展示している。こうした歴史的経緯から、父親が同海軍航空隊の生き残りの松島昇さん(68)=津市香良洲町=は「一般の品とは価値の次元が違う」と指摘する。

前葉市長は取材に対し「防犯カメラは必要。来年度の早い段階で対応したい」と述べた。資料館を「戦争の歴史に特化した貴重な館」とし「盗難対策を超え、より多くの人に訪れてもらえるような取り組みの必要性を感じている」と話した。