養豚場で豚コレラか いなべで感染疑い 典型的症状なく詳細調査へ 三重

【検査結果を説明する農林水産部の職員=三重県庁で】

三重県は23日、いなべ市内の養豚場で家畜伝染病「豚コレラ」に感染した疑いのある豚が見つかったと発表した。一方、国は「慎重に調べるべき」として、県に詳細な検査を指示。国が県の検査結果を踏まえて豚コレラが発生したと判断すれば、県は家畜伝染病法に基づき、この養豚場が飼育する豚の殺処分を決める方針。県内の養豚場で感染が確認されれば、岐阜県で発生した昨年9月以降で初となる。

県によると、12日午前10時40分ごろ、いなべ市内の養豚場から「飼育している豚2頭が死んだ」と県に通報があり、県中央家畜保健衛生所(津市)や、国の専門機関「農業・食品産業技術総合研究機構」(東京都)の検査で陽性反応が出た。

一方、専門家でつくる農林水産省の小委員会は、この養豚場で豚コレラの典型的な症状がみられないことから「慎重に調べて、総合的に判断する必要がある」などとして、詳細な検査の実施を県に指示した。県は24日午後にも検査の結果を出す予定。

衛生所の検査結果を受けた県は、国が豚コレラ発生の判断を出すと想定して23日夜にも殺処分を始める方向で準備に取りかかっていた。しかし、午後8時ごろに国から急きょ判断を留保する連絡を受け、作業のために待機させていた県職員を撤収させた。

この養豚場は岐阜との県境付近にあり、約3千頭の豚を飼育。6月7日に県境から約1・5キロ離れた岐阜県養老町で野生イノシシの感染が確認されたことを受け、県は半径10キロ圏内にあるこの養豚場を監視対象とし、出荷計画の提出や体温測定の報告などを義務付けていた。

国が豚コレラ発生を判断すれば、県は豚コレラ対策対応マニュアルに基づく警戒度を2段階のうちで最も高い「A体制」に引き上げた。A体制に移行した場合には、県幹部らで構成する「豚コレラ対策本部」の本部長に鈴木英敬知事が就任する。

豚コレラは昨年9月、国内で26年ぶりに発生。岐阜県や愛知県の養豚場で感染が相次ぎ、三重でも6月26日以降、いなべ市内で4頭の野生イノシシの感染が確認された。県はワクチンをエサに混ぜて山中に散布するなど、対策を進めていた。

豚コレラはブタとイノシシに特有のウイルス性疾病で、潜伏期間は約2週間。感染した豚のほとんどが死に至るという。野生イノシシなどを介した感染が指摘されるが、経路は不明。人には感染せず、感染した豚の肉を食べても人体に影響はない。

■風評被害の不安広がる■

県内でも発生が危惧されていた豚コレラ。23日に発生の可能性が浮上したことで、県内農家に感染拡大や風評被害への不安が広がった。飼育豚へのワクチン接種を拒む国の対応に憤る声も上がる。

県は岐阜で感染が確認された昨年9月以降、国の指南で防護フェンスの設置や消毒などの対策を進めた。今月5日からは山中へのワクチン散布も実施。県の担当者は「できることは全てやってきた」と話す。

それでも、県内の養豚場にも危機が迫っている。岐阜、愛知両県のケースでは野生のイノシシや出荷のトラックを介した感染の可能性があると指摘されているが、実際の原因は分からないままだ。

ある県内の養豚農家は取材に「今にも感染が迫っている状況」と危機感をあらわに。別の養豚農家は「(感染の疑いがある養豚農家は)よく知る間柄で、とても詳細は話せない」と言葉少なに語った。

菰野豚を扱う総合食料販売店「角屋」(菰野町)の伊藤裕司社長(62)は風評被害を懸念する。「豚コレラは人に感染せず、陽性反応が出た場合は市場に流通しない。消費者には安心してもらいたい」と話した。

一方、業界からは飼育豚にワクチンを投与すべきだとの指摘も上がる。県内41農家でつくる県養豚協会は2月、飼育豚にワクチンを投与するよう求める要望書を、鈴木英敬知事に提出していた。

ただ、農林水産省は飼育豚への使用に踏み切っていない。ワクチンを使用した場合、国際的に豚コレラの「洗浄国」ではなくなることから、豚肉の輸出に影響が出ることを懸念しているためだ。

県養豚協会の小林政弘会長(65)は取材に「対応に憤りを覚える。初期段階で農家にワクチンを渡すべきだった。これ以上、被害を拡大させないよう早期にワクチンを提供してほしい」と話した。