荒神堂再建へ有志ら決起 熊野古道・世界遺産15年、今秋完成目指す 三重

【荒神堂の解体作業=尾鷲市の八鬼山山頂付近で(県教育委員会提供)】

【尾鷲】熊野古道・八鬼山(標高627メートル)の山頂と九鬼峠の間にたたずむ荒神(こうじん)堂(別名・日輪寺)。古くなったお堂を新しく建て替えようと、三重県尾鷲市の有志が保存会とプロジェクトチームを立ち上げ、今秋の完成に向け整備を進めている。熊野古道が世界遺産に登録されて今日7日で丸15年。荒神堂の再建に携わる野田隆代さん(61)は節目の年の再建で「熊野古道を歩く人や尾鷲市を訪れる人が増えるきっかけとなれば」と期待を込める。

県教委などによると、荒神堂は少なくとも400年以上前から信仰されていたとされ、寺の言い伝えでは702(大宝2)年に開かれた。西国三十三カ所第一番札の前札所として、八鬼山を越える巡礼者が道中の安全を祈って参拝に訪れていた。お堂に祭られている石造りの三寶荒神立像は、1576(天正4)年の作と記録があり、1978(昭和53)年に県有形民俗文化財に指定されている。

野田さんらが再建を思い立ったきっかけは、尾鷲商工会議所女性部会の発足20周年を記念し、同市のガイドブックを制作しようと熊野古道を歩いたことだった。

女性部の会長だった野田さんは、八鬼山を歩いた時に荒れ果てた荒神堂を目にしてショックを受けた。荒神堂は、手入れされなくなって20年ほど経っていた。「これでは世界遺産とは言えない。なんとかしないと、と思った」と振り返る。

野田さんらは荒神堂再建のため、昨年7月に「八鬼山荒神堂改修プロジェクト」を立ち上げ、野田さんが理事に就任。同年11月に一般社団法人「八鬼山荒神堂保存会」の会長としても活動した。

改修工事の費用を集めるため、寄付や募金活動に励んだ。取り組みの成果、昨年7月末から今年6月10日までの間で、取り組みに賛同する市内外の団体や個人から1800万円の寄付金が集まった。

資材を運ぶモノレールを設置するなど準備を進め、解体工事は6月20、21日の両日に行われた。解体を進めると、はりに「明治26年巳7月」と墨で書かれた文字や、荒神堂内の壁に軍人が書いたとされる辞世の句が見つかった。

県教育委員会の高松雅文さんは「明治時代に廃仏毀釈で取り壊されたが、明治26年に建て替えられた証拠になる」と説明する。辞世の句については「武運長久の仏様として信仰されていたことが分かる発見になった」と話す。

荒神堂は、今年4月に津市在住の所有者から同法人に寄贈された。9月10日までに尾鷲ヒノキを使ってお堂の建て替えを終え、同28日に落慶法要を執り行う予定。

野田さんは荒神堂の再建について「思い切ったことをできるのが尾鷲人。尾鷲の若い人たちに、諦めずに取り組む大切さを伝えたい。そして、たくさんの人に見に来てもらいたい」と話している。