三重県議会 食産業の人材確保へ 県「プラットフォーム」来年設立

三重県議会6月定例月会議は10日、藤田宜三(新政みえ、4期、鈴鹿市選出)、小林正人(自民党県議団、4期、同市)、谷川孝栄(草莽、3期、熊野市・南牟婁郡)、野村保夫(自民党、2期、鳥羽市)の4議員が一般質問した。県は食関連産業の人材を確保するため、農林水産業関連団体や食品製造業者、飲食・宿泊業者などでつくる「みえ食の“人財”育成プラットフォーム」を来年3月に設立すると明らかにした。食に関わる多様な分野の事業者に研修を通じて交流してもらい、魅力的な職場づくりにつなげたい考え。

■もうかる農業、成果は ― 藤田 宜三議員(新政みえ)
藤田議員は「もうかる農業」を掲げる県の成果を尋ねた。県当局は県内の農業者を対象に実施した調査で平均農業所得が約470万円だったとした上で「目標の500万円に近づいている」と説明した。

【もうかる農業】
藤田議員 県が「もうかる農業」を掲げてから8年が過ぎた。結果として農業者はもうかり、可処分所得が増えたのか。

前田農林水産部長 平成30年度末に実施した県内認定農業者の経営実態調査では、回答のあった個人経営体の平均農業所得が470万円となり、目標の500万円に近い所得となっている。しかし、3分の2が500万円未満。特に水田農業や野菜、果樹の所得が相対的に低く、規模拡大や所得向上が喫緊の課題となっている。もうかる農業の実現に向けて取り組む。

【種子条例】
藤田議員 全国で9道県が既に種子条例を作った。県は「要綱で十分」と説明するが、要綱は将来的に執行部が一方的に変えることも可能。知事の意見は。

知事 県は種子法が昨年4月に廃止された後に切れ目なく要綱をを策定し、これまでと同様に優良種子の安定供給体制を構築してきた。現時点では優良種子の確保に特段の支障がないことも確認している。条例化については既に制定した9道県の状況も把握しつつ、関係機関の意見を聞きながら、必要性も含めて検討したい。
■大学サテライト提案 ― 小林 正人議員(自民党県議団)
若者の県内進学を促すため、県外大学のサテライト・キャンパスを誘致することを提案。福永戦略企画部長は県外の私立大学を対象とした調査で「三重県を想定している大学はなかった」と厳しい現状を明かした。

【大学誘致】
小林議員 入学・進学を機に転出する若者が多い。東京圏の大学のサテライトキャンパスを設置するのはどうか。

福永戦略企画部長 一昨年度、県外の私立大学を対象に調査した。キャンパスの設置や移転先で魅力を感じる地域として「東海」と回答した大学が11校あったが、具体的に三重県を想定している大学はない状況だった。国の仕組みを活用するとともに、東京23区内の大学を直接訪問し、サテライト・キャンパスの誘致に向けて働き掛ける。

【子どもの貧困対策】
小林議員 子どもの貧困対策の取り組み成果や今後の対策は。

大橋子ども・福祉部長 子どもの貧困対策では、学習支援と居場所づくりが重要。先進事例の紹介や意見交換などで市町に学習支援の充実を働き掛けてきた。学習支援が利用できる自治体は平成26度の6市町から30年度には28市町に拡大した。居場所づくりについては子ども食堂に着目し、多くの団体が参画できるよう推進する体制を整えた。現行の「県子どもの貧困対策計画」の最終年度を迎えるため、実効性の高い次期計画を策定する。
■SIBどう進めるか ― 谷川孝栄議員(草莽)
社会問題の解決に民間の力を生かす「SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)」の導入に向けた意向を尋ね、鈴木知事は認知症対策での導入を検討する考えを示した。

【虐待防止】
谷川議員 児童虐待相談件数の増加は対策の結果だと考え、評価している。県は積極的に取り組んでいるが、体罰の禁止などを周知するだけでなく、保護者が学べる機会も必要。

大橋子ども福祉部長 平成29年に策定した「みえ家庭教育応援プラン」では、基本方針の一つに「保護者と子どもの学びの応援」を掲げている。具体的には妊娠中から小学生までの子を持つ保護者を対象にしたワーク集を、保護者が集まるワークショップなどで活用している。今後もワーク集の普及や子育て家庭に寄り添える人材の育成などに取り組む。

【認知症】
谷川議員 県は認知症予防で、民間資金を活用して成果に連動して対価を支払う「SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)」に取り組もうとしているが、具体的にどう進めるのか。

知事 まず先行自治体を調査して県内の市町に取り組みへの意向を聞き取り、関心のある市町と協議して可能性を探りたい。例えば奈良県天理市ではSIBで公文と連携している。認知症をどれだけ予防するか、どれだけ改善するかなど、何らかの目標が達成された場合は民間に対価を支払う仕組みになると思う。
■食の人材育成に遅れ ― 野村 保夫議員(自民党)
食関連産業での人材育成の遅れを指摘し、県の取り組みを尋ねた。村上雇用経済部長は「みえ食の“人財”育成プラットフォーム」を立ち上げるため、食品業界や教育機関などの関係者で準備会議を設置し、具体的な取り組み内容を検討していると説明した。

【食関連産業】
野村議員 食関連産業は県内の多くの雇用を支える重要な産業だが、人材育成の取り組みが遅れている。

村上雇用経済部長 準備会議を設置し、「みえ食の“人財”育成プラットフォーム」の組織の在り方や具体的な取り組みを検討している。人材の育成や確保を柱に来年3月の設立に向けて準備している。食品衛生や経営マネジメントの基礎研修のほか商品開発の実践的な研修を実施したい。

【海女文化振興】
野村議員 5月に「海女に出逢えるまち鳥羽・志摩」が日本遺産に認定された。海女漁のユネスコ無形文化遺産への登録に向けた知事の意気込みは。

知事 タイやベトナムでトップセールスを行い、海女小屋体験や海女と一緒にダイビングするプログラムなどを紹介した。5月にはフランスの旅行会社が海女小屋を視察したほか、6月上旬にもタイの旅行会社が視察する予定。メディアの取材や旅行会社の視察を受け入れ、多くの人に海女を知ってもらう。ユネスコ無形文化遺産登録に向けて機運を醸成し、国内候補として選定されるよう地域とともに取り組む。
<記者席 ― 「熱意感じられない」>
○…小林議員は冒頭で「頑張って質問したい」と述べ、張り切った様子。淡々と答弁する大橋子ども・福祉部長に「熱意が感じられない」とダメ出しした。

○…小林議員の指摘を受けてか大橋部長の答弁の声が大きくなり、福井医療保健部長は「熱意を持って取り組みたい」と答弁。顔ぶれが大きく変わった執行部側にとって、緊張感の漂う一時間となった。

○…改選後に名前を「大久保」から変更し、会派も鷹山から草莽に変わった谷川議員。この日は支持者らを県議会に招き、約30人が傍聴した。

○…「いつもと違った質問を」と、女性の健康や児童虐待の「予防」に焦点を当てた。名前や会派だけでなく、質問も「心機一転」のようだ。

○…一方、紀伊半島一周道路を進めた県に感謝の言葉を重ね、認知症対策は「特に南部で」と要望。大勢の支持者が見守る中で、地元愛は不変だった。